漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

北海道不登校児童生徒支援連絡協議会

■北海道の不登校児童生徒支援連絡協議会に参加。全道の不登校対応をしている学校・教育委員会フリースクール等民間団体などが集まり、現状報告や国・道の施策について聞き、事例発表を聞くもの。コロナ禍になってからzoom開催だが、今回は参加学校が300人以上と多過ぎてzoomの対応能力を超えてしまったので、学校関係者はYouTube LIVEで観るようになった。以前は道庁の地下大会議室を使っていたが、その時もそこまではいなかったと思う。多くの参加者が集まったのは悪くない。ただ、以前なら事例発表の後にグループ分けして話し合う時間を取っていた。zoomなら一応それが出来るのだけど、人数が多過ぎて無くなったのだろう。残念。

■冒頭に基調として語られたのは、

  • 不登校を教育の観点のみで対応することには限界がある
  • 不登校児童生徒に問題がある」という決めつけを払拭していく
  • 教育機会を不登校特例校やICTの活用などで確保し、出席扱いを増やす

という3点だった。最初の話しは、ならば教育以外にどういう観点で対応するのかという話しになるはずだが、どうもそれは、社会的自立を目標にして進路を主体的に考える児童生徒を目指す、といったことになるらしい。それはゴールであり対応方法を導く観点ではないと思うのだが、どうか。社会的自立が重要と言われて20年とこになるが、結局学校のやっていることは変わりがないように思う。

■変化のなさは、その後の現状報告でも感じた。今回は不登校児童生徒が全国で約30万人、北海道で12,000人と過去最高な上に、北海道の1000人あたりの不登校児童生徒数は全国2位という学校関係者にはショッキングな数が出ている。しかし、その分析で語られるのはあいかわらず「無気力・不安」を原因とする人数の多さである。この調査項目は不登校が生徒に起因するという視点が内在しており、最初に語られた「不登校児童生徒に問題がある」という決めつけを払拭するという方針と根本的に矛盾している。その矛盾は、本音と建前として現場で子供たちを傷つけていることがよくある。不登校は問題行動ではないという文科省通達が出て早幾年。「全然学校に来る気がないから」「サボりぐせがついている」などという生徒評価を聞かなくなる日はいつ来るのやら。

■国の施策としてはCOCOLOプランの解説があった。不登校特例校全国設置、「チーム学校」での生徒見守り、「学校風土」の見える化の3点の話し。不登校特例校は最終的に全国300ヶ所に設置するというが、教員不足の問題はどうしようというのだろうか。またぞろ退職教員の受け皿になるのか、などと悪い想像をしてしまう。また、生徒見守りや「学校風土」の見える化は生徒に配布されたタブレット端末を使ってアンケート調査を行うことで実施される。ICTだプログラミングだなどと言うが、生徒への指導指示ツールとしての使われ方が一番に見える。別室登校している子に授業をオンラインで見せるのもそれだしね。

■北海道の施策としては、教育支援センターが増えているので設置をさらに支援していくということと、不登校支援ポータルサイトを作ったよというところ。このポータルサイトはリンク集であり、道教委が不登校ついてどう考えているか。児童生徒や保護者に対してのメッセージとしては「友だちとの関係で悩んだり、学校生活に不安な気持ちがあったりして、学校に通うことができないときは、家で休んだり、自分に合った方法で学習したりすることも大切です」という一文があるのみ。今後の更新に一応期待しておく。

■事例発表は岩見沢市・帯広市函館市の三市から。岩見沢市は「プロアクティブ」とか「リアクティブ」とか文科省が前にやった不登校対応のフォーラムで出ていたことをやってますという感じの報告。北翔大学に頼んで学級満足度調査をしたり、北大学力増進会の授業動画を不登校のサポートルームで観れるようにしたりしているのが目を引いた。保護者茶話会もやっているとのこと。模範的ですね、という感想。増進会は昔の勤務先なので、ほほうと思った。

■帯広は教育委員会で「ひろびろチョイス」というメタバースを利用した不登校支援電脳空間を作っているという報告。不登校の増加に対して、教育支援センターに通えない人への対応をどうするか、教育支援センターを増やすにしても予算の問題があり、市議会でも不登校対応について話題になっているという背景があったところに、文科省のICT推しと端末配布があったので企画してみたとのこと。どうも話をしてくれたやり手職員が一気に進めたようだ。不登校への対応というのは、多分集まって考えると意見調整の中で事なかれ主義になっていくのだろう。この職員は学校でのガイドラインや保護者とのシミュレーション例を作ることで学校が企画に乗ってこれるようにしたそうだ。また、市内のフリースクールクラムボンやぷれいおんとかち)と繋がり、体験活動も出来るようにしている。今回の事例発表の中では一番面白かった。

函館市は青柳中学校という学校の実践を発表してくれた。ここは不登校児童生徒が学区内で過ごすことのできる施設・団体を複数連携させて「いてもいい場所ネットワーク」(この名前はひどいと思うが)という繋がりを作ったそうだ。ただ、始まりは学校ではなく地域包括支援センター不登校生を受け入れていたところから始まったとのこと。地域包括支援センターは高齢者福祉の施設だが、生活困窮の方とも繋がって対応が可能になったそうだ。学校発信で無くとも、こうした繋がりを受け入れるところは期待できる。

■発表が終わって少し討議でもするのかと思ったら、残り時間でフリースクールの人たちに話しをと突然振られた。道教委よ、ちょっとそれはひどいと思いつつ、参加していたところが話しをした。退職校長がどこぞのICT教材に惚れ込んでフリースクールを始めて、これを使って支援するのだと宣伝のようなことをしていたのはいかがなものかなどと思いつつ、自分もしどろもどろになりながら話した。不登校を教育の観点のみで対応することに限界があるというのはその通りだと思うので、フリースクール以外にもたくさんの人たちと繋がれるといいですね、的な話しをした。はず。(水曜日)