漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

市教委の保護者交流会

■2月9日に行われたものだが、土曜日まで待つのも勿体ないから月曜日の日誌で書く。ちえりあで行われた札幌市教委主催「不登校の心配のある生徒の保護者交流会」に出席した。年に2回行われる交流会で、フリースクール職員にも出席できますという案内があったので行ってきたもの。

■まず教育センターから、不登校児童生徒への支援について「教育相談室から見る子供理解」という講演があった。どうも教育機会確保法成立以来の道教委・市教委の不登校児童生徒への対応姿勢が二十年以上前に回帰している気がしているのだが、今回もやはりその認識が強まった。不登校児童生徒数は道内・札幌共に増加していると語るのだが、正確に何人かという話しは資料の上でも記述が無い。以前と変わって、文科省の問題行動等調査で政令指定都市不登校児童生徒数が発表されるようになっているから調べればわかることだけど、なんでか出さない。増えている、という話しだけ出して数を出さないのは何故かというのは聞きたいところ。
www.mext.go.jp

■そして、それが「教育機会確保法の影響もあると考えている」と話していたのには驚いた。この教育センター職員の講演の話しではほとんど詳しく語られなかったが、休むことを認めたから休みやすくなったという論理展開が成されていたわけだが、果たして子供や家庭のうちどれくらいがこの法律を知っているというのか。そもそも、この職員も「こんな法律がありまして」というような姿勢で話したではないか。知り合いと話したところだと、函館あたりじゃ教育機会確保法があるから休んでいいとポジティブに話す教師もたくさんいるというが、札幌ではそんな教師の話しはとんと聞いたことが無い。確保法のおかげでフリースクールの利用者が増えましたという話しも聞かない。もう、お手軽に原因をなすりつけることができそうなものに頼っているとしか思えない。そして、資料に出てくる不登校の定義は「学校に行きたくても行けない生徒」なのだ。教育機会確保法は多様な学びを主体的に選択して不登校をする生徒を想定しているわけで、教育機会確保法のために不登校児童生徒が増えたというなら、それはこの講演で語られる不登校児童生徒とは関係無いということになるのか。

■まあ、これは保護者交流会であって、支援者や研究者向けの話しをしているのではない、と言うことはできるかもしれない。だからなのか、話しの中では子供をどうするか/子供を変えるためにどうするか、という話しばかりが出てきて、学校にどう働きかけるのか/学校はどんなことができるのかという話しは出てこない。なのに、学校にはたくさん進路の情報がある(本当か?)とか小学校から中学校の引き継ぎの時には保護者から働きかけをしてほしい(それは保護者が苦労せねばならないことか)という、家庭から学校への働きかけを求める話しばかりは出てくる。もしかして、教育センターではそうした話しが親にどのような受け止められ方をされるのか、全く意識していないのではないか。

■最後に笑ってしまったのは不登校への対応で「学校復帰の兆しが見え始めた時、ここがチャンスなんですが」と話した時だ。何を至上命題としているかはっきりと話しているのは教育委員会の設置しているセンターだから仕方無いとしても、不登校児童生徒の多様な学びを支援する教育機会確保法が出来ましたと話した人がそれを言っちゃだめだろう。

■そして、講演のパワーポイント資料の最後には連携する関係機関にどんなものがあるのか羅列されているのだが、フリースクール不登校の親の会も無い。あれれ、この保護者交流会にはフリースクール職員も参加願いたいと言っていたと思うのだけど、我々は関係機関ではないのですかね。そして、その後の懇談の場で話した保護者の方々は口々に「こういう場で不登校の子と暮らす日常について、他の方の話しを聞けて良かった」と話してましたが、そういう場を何十年も前から運営している親の会の情報を伝えた方がいいのではなかろうか。教育センターの人たちもフリースクールや親の会を知らないわけじゃあるまい。大体、毎年提出を求められるフリースクールの運営状況についてのアンケートはなんなのだ。ということで、懇談した保護者の方々には親の会のことをお伝えしたが、そういう資料集的なものをおみやげに上げられたらいいよね、と思った。

■ということで、あります。(水曜日)