漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

3日で支援

■昨日、道教委と民間団体との懇談会があった。コロナ対策で今年度もオンラインでの開催。道教委から不登校対応の説明があって、参加団体の近況報告があって、意見交換の時間が20分ばかりあって終了。ちなみに意見交換は「学校との連携」とテーマが決まっていた。うーむ。

■資料だけはたくさんもらえたのでじっくり読んでいる。道教委から各教育局長、道立学校長、札幌市を除く市町村教育委員会教育長ならびに市町村立学校長にあてた通知からはいまの学校の不登校対応の流れがわかる。まず「予兆を含めた初期段階への支援」として、

  1. 欠席理由は、保護者との連絡により確認、記録化し、学校全体で情報共有すること
  2. 欠席が続いたとき(目安として連続3日)は、理由によらず、家庭訪問等により児童生徒の状況を現認し、管理職を含め生徒指導部会等において、欠席の要因や背景をもとに今後の支援方針について共通理解を図ること
  3. 欠席がさらに続いたとき(目安として連続5日)は、学校と関係機関の連携・協力により「児童生徒理解・支援シート」等を作成し、児童生徒や保護者への支援を始めること。なお、作成にあたっては、学級担任、養護教諭スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が中心となり、児童生徒や保護者との話し合いを通じて作成することが望ましいこと

うっかり休もうものなら、もう大騒ぎなのだった。2番目は虐待を警戒しての措置だろうが、「理由によらず」とはずいぶん強い。それにしても3日で支援方針を定め、5日休めば支援スタートとはせわしない。不登校とはそれだけ大変な事態なのだ。いくら「不登校は問題行動ではない」と言ったところで、ここまで大がかりな体制を組むならやっぱり「問題」なんだろう。

■学校側の努力むなしく不登校になってしまった場合はどうなるか。「不登校児童生徒への支援」では、「児童生徒理解・支援シート」を活用し、きめ細かな支援を継続するよう求めている。その際、教育支援センターやフリースクール、ICTを活用した学習など「多様な教育機会」確保を心がけ、児童生徒が専門的な相談や支援を受けられるよう、児相や病院、民間団体含めた相談窓口を周知するとある。

■これらは道教委のオリジナルではなくて、おそらくどこもおなじ流れで動いている。なぜなら「予兆への対応を含めた初期段階からの組織的・計画的な支援」「アセスメントと支援計画の作成、共有による組織的・計画的な支援」をせよと文科省の通知に書かれているからだ。
hyouryu.hatenablog.jp
■「対策」を「支援」と言い換えたところで、旧来の「未然防止」「早期発見・早期対応」のスタイルはひとつも変わっていない。変わったのは支援チームにフリースクールも組み込まれたことで、だから道教委も懇談で「学校との連携」を話題にする。

■勝手にチームに入れるんじゃねえと突っ張るか、チームなんだから運営資金を融通してくれと談判するか。チームじゃないが金よこせも悪くない。さて、どうしよっかな。とりあえず自治体のフリースクール利用補助一覧は渡して、今度お話しに行きますと伝えておいた。

■ところで、ICTをつかった学習は指導要録上の出席あつかいとなる。これ、不登校が前提だけど、ひっくり返ることはないのかな。家で勉強するので学校へは行きません。出席あつかいにだけしておいてください、みたいな。そのむかし「不登校が増えるからフリースクールは認められない」なる珍説を聞いたが、文科省の推すICT活用はどうなんだろうか。学校の管理下にあればかまわないのかしら。家に学校が入り込む形になるわけだし。

■となると、それを望むフリースクールも出てくるかもなーなんて考えていたのだが、そういやこんなニュースもあったのだった。名古屋市は市内110の市立中学校のうち30校に「校内フリースクール」を設置すると決めたとのこと。

校内フリースクールは、空き教室にじゅうたんを敷くなどして、生徒が心地よく過ごせる空間作りを各校で工夫する。異なる学年の生徒が一緒に通うこともあるため通常の授業はせず、自習など1日のスケジュールを生徒自身が決めるようにするほか、スクールカウンセラーに悩みを相談しやすい環境も整える予定だ
名古屋市、校内フリースクール開設へ 中学30校に、2022年度から | 毎日新聞

フリースクール」って一体なんですかねえ。遠い目になってしまうな。いっそ、学校全体をそういう場所にしてしまえばいいのに。