漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

不登校云々以前

■さて、一週間たって24万人の衝撃もやや薄らいだので、もう一度文科省の報告を見る。

■まず2021年度は異常な年だったと確認する必要があります。たとえば、東京で4月から9月の半年間で緊急事態宣言もまん延防止重点措置も出されていなかったのは、4月1日から11日の11日間しかありません。ワクチン接種が進んだとして10月から行動制限は緩和されますが、年が明けると再度、まん延防止重点措置が発令されます(東京は1/21~3/21)。

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■世の中の動向は個人に影響します。体調がすぐれなかったり、気持ちが不安定になったり、日常生活をこなすのが難しくなったり。ずっと頭を抑えつけられたような状況で、友だちとじゃれあったりおしゃべりできるわけでもなく、行事は延期になったり中止になったりで見通しが立たない。学校に行くどころじゃなかった子は多いはずで、不登校増加の責任を学校にのみ負わせるのは酷でしょう。

■前年度から48,000人の大幅増は異常な年の統計だからで、2022年度はもうすこし穏やかになるんじゃないか。そう言いたいところですが、感染状況は変わらないのに表面上は問題ないように生活している現状も別の負担をかけているはずで、事態はあまり変わらないかもしれません。

■2020年度の統計で北海道は不登校児童生徒数の割合が全国2位でした。2021年度は5位。割合は2.48%から2.97%と増えていますが、ほかの県がもっとがんばった結果です。

■ここ数年の上位メンバーはだいたい決まっているのですが、今回の注目は宮城県です。前回8位から2位へ。10位以内の移動ではあるのですが、宮城県は2019年度から2020年度では不登校の児童生徒数も割合も両方減らしているのが興味深い。この年に割合を減らしたのは宮城県岡山県だけ、0.1ポイント以上減らしたのは宮城のみで、どんな不登校対策をしているのか調べていたのですが、まさか0.8ポイント近く増やすとは。短いスパンだけ見てもわからないので、もうすこし観察を続けます。

■最後に、不登校とは別の数字を。2021年度の全児童生徒数は9,643,935人です。1,000万人を切ったとこの日誌で触れたのが2016年度。そこから5年で40万人近く減っています。

グラフにしてもおもしろくもなんともない。一直線に下降しています。ちなみに漂流教室をはじめた2002年度はおよそ1,110万人ですから、20年で146万人減った計算になります。

■現行の学校教育は子供が何人いるのを前提にしているのでしょうか。俺の甥は通っていた学校、中学校とも統廃合でなくなり、今度は高校がなくなるそうです。学校に行くいかないの前に学校自体がなくなってしまう。否が応でも状況は変わり、公教育制度と責任配分も変わります。うかうかしていると個人および家庭に過度の責任がかかるのではと、これまでの不登校対策を見てきた身として警戒するのですが、さりとて学校に負わせるのも違う。学校という大規模子供預かりセンターをどう世の中に分散するか。カタリバのメタバース空間はひとつの方法でしょう。身体は家に置いて、脳を預かる。そういった子たちがあつまるシェアオフィスのような空間が「居場所」になる? それとも小さな「学校」が増えるのでしょうか。

■そのなかで漂流教室はどのように変化するかいつも考えているのですが、どうもピンとくるものがない。なにがそこからはみ出るか。誰がそこから追いやられるか。「誰ひとり取り残さない学び」は「学びたくない人」をフォローしないしね。