漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

不登校に関する調査研究協力者会議その3、と

■今回も調査研究協力者会議が議論のベースにするのは、教育機会確保法に基づいて昨年行われた「不登校児童生徒の実態調査」の結果ということのようだ。資料2に結果の概要があるので見てみよう。

■まずこの調査の対象は、小学校6年生と中学校2年生で不登校かつ学校に登校(別室登校ということだろう)又は教育支援センターに通所の実績がある当事者と保護者ということになっている。この対象者に学校から調査票を配り回収は業者に送付とのこと。そして回収率は小6児童と保護者でそれぞれ12%程度、中2生徒と保護者は8%超という驚きの数字だ。まずここから読み取れる実態は「不登校について聞いてくれるな」という思いではないだろうか。別室登校や支援センターを利用しているという、学校との親和性がある程度高いと考えられる層ですらこれなのだ。

■その少ない回答の中で「特定のきっかけに偏らず、そのきっかけは多岐にわたる」と言われても、本当にそうなのか疑問が残る。また、「不登校児童生徒が抱える様々な不安が明らかになった」というのは、何か言っているようで何も言っていないに等しい。保護者抱える不安や困難が明らかになった、というところもこの調査をするよりも親の会で語り合われているような中身に過ぎない。相談しやすい方法で「直接会って話す」「メールやSNS」とあるのも、そりゃ相談するなら言葉を使うしか無いのだからそうなるに決まっているし、ましてや何らかの方法で学校教育とのコンタクトが取れている人なのだから、普段少しでもやっていることを回答するだろう。

■結局、教育機会確保法で決められたから行ったとしか考えられないこの調査の設問で導こうとしているのは、「相談窓口の周知やアウトリーチ型支援が必要」という方向性と「不登校の初期段階からの早期支援の重要性」という問題行動として対応していたときと何ら変わりのない現場の状況追認であろう。

■と、協力者会議のことを日誌に書いてオッケーだと思っていたら、令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」が発表されたではないか。不登校の人数にはコロナウイルス感染回避した数は入れずに、小中学校で19万6千人を超えた。とうとう、在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は2%になった。

不登校百万人化計画を進める身としては喜ばしい限りであるが、どんなに「問題行動ではないと前に決めた」と言ったところで「憂慮する事態」などと分析されているのだから、文科省ひいては現場では問題行動扱いなのだ。山田は不登校は増えて然るべきと考えているがそれで辛い毎日を過ごすことは無いような仕組みを作ることと一体である。こうなると、やはり平成28年の通知を廃止して言質を取れなくなっているのは痛い。