漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

祈り

■北大で開かれたフォーラム「子どもの貧困を考える」に行ってきた。昨年北大の松本伊智朗教授が北海道・札幌を対象に調査した貧困についての実態調査をもとに、北海道と札幌の子どもの貧困対策計画について担当者からの説明と子供の貧困対策に関わってきた様々な立場の人たちのパネルディスカッションという構成。

■実態調査については、今後いずれかの媒体で詳しい内容を見られるようになると思うが、北海道の子供の貧困の状況について

  1. 経済的格差の中で子供の育ちと子育てがなされている 
  2. 貧困線以下の子育て世帯は12.6%と推計され、全国値と近似
  3. 母子世帯の約半数が貧困線以下と推計される
  4. 貧困線は生活保護基準と近似し、捕捉率が低いことが推察される

という四点が配布されたレジュメに挙げられていた。※今回設定された貧困線というのは、世帯人数別の相対的貧困線にあたる金額(2人世帯173万円、3人世帯211万円、4人世帯244万円、5人世帯273万円)と調査家庭の年収から推計される可処分所得を比較して、各世帯の可処分所得相対的貧困線の何倍にあたるかを計算したもの

■北海道も札幌市も、子供の貧困対策についてまず重要視しているのは相談支援体制だった。入り口をまず広くするという考えだ。次いで、強調されていたのは、居場所と学習支援という直接子供達と接するシステムを増やすという点。北海道では以前より取り組んでいる「共生型地域福祉拠点」を上手く利用していくことを考えているとのこと。どちらの自治体もも知事や市長が挨拶に来ていて、関心の高さがうかがえた。パネルディスカッションでは、世帯・子供自身に給付金という形でお金が渡る仕組みが欲しいという意見が共通していた。また、現場で携わっているとしばしば当たる教育・福祉・子ども未来局の縦割りを乗り越えて部局横断的な取り組みを求める声もあった。

■2010年来、後志地区の生活困窮者学習支援を皮切りに子供の貧困について漂流教室なりに関わってきているが、今年は今までで一番社会の目も向けられ盛り上がった一年だったと思う。政治の動きも選挙が絡んで大きくあり、生活保護の基準引き下げや児童扶養手当の支給、幼稚園無償化など個々の政策に色々変化もあった。子ども食堂に代表される、民間の動きも盛り上がってきている。漂流教室のメインフィールドの一つである不登校に関する政治的社会的動きからすると、信じられないくらいのスピードで、たくさんのことが進んでいる。ある意味カオスな状況は新たな活動が生まれる前提であるからまずは歓迎したい。願わくば、ここで今生まれてくる活動が十年二十年以上の長い年月で続けられるものであることを。(火曜日)