漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

貧困の連鎖の主因

■エールアライブでお仕事。漢文を指導した。勉強していて、数学みたいだとの感想。返り点はそうだね。

■夜、訪問の顔合わせ。猫と犬とカナヘビを飼っている御宅。最近、色々な動物を飼っている訪問先が増えているな。世の中の流れなのか。その後徹夜のお仕事。ねむねむ。

■子供の貧困対策で政府が「子どもの未来応援国民運動」というのを始め、基金を創設し寄附を募っているとのニュースを見た。貧困の連鎖をどう無くしていくかで、経済的に厳しい家庭に教育支援をするということだ。まあ、それも必要といえば必要なのだけど、連鎖構造を成立させている主因は別にあると最近考えている。それは、高校卒業後の進学には生活保護費は使えないという制約だ。

■現在、全国の高校卒業後の大学等進学率は76.8%であり就職率は17.4%である。それに対して、全国の生活保護世帯の大学等進学率は31.7%(うち、大学は18.5%)。就職率は43.6%となる。これは、生活保護世帯の高校生が勉強ができないということではない。

■受給世帯の場合、高校以降の高等教育では保護を利用することはできないことになっている。それでも進学を希望する場合は、世帯分離という手続きをすることが一般的だ。生活保護を受給している保護者と生活を別にして、一人暮らしが必須になるということだ。漂流教室のスタッフの中でも、こうして大学に行っている人は過去も現在もいる。札幌市内の大学でも、新たに部屋を借りたり、親族を頼ったりする。こう書くと普通の大学生もやっている、努力だと思われがちなのだが、「普通の」ことが出来ないから受給世帯なのだ。

■まず、住む場所をどうするか。世帯を別にした親を、保証人として頼ることは難しい。頼れる親族がいるならいいが、そもそもそうした親族もいなかったり頼れないから生活保護を受給しているわけだ。もし住む場所を見つけることができても、お金をどうするか。学費は免除申請できても、入学後の生活費は。家からは出ないのだから、奨学金とバイト利用になる。奨学金は現在のところ、単なる借金に過ぎないのは皆さんご存知の通り。さあ、四年間途切れずにバイトをしながら、大学に通ってくださいというのは、病気などの何らかの事情で休むということが出来ないに等しい。

■この前、受給世帯の高校生や大学進学した人たちにこの現状の感想を聞いて出てきたのは、中学・高校と進学するに連れて選択肢が狭まっていく気がするという言葉だった。勉強をいくら頑張ったところで、それ以外の部分で進学をあきらめさせるハードルがどんどん出てくる。当然就職する人が多くなるが、高卒と大卒なら平均年収に差があるのは当然だ。ならばと一念発起して頑張って大学に進学すると、卒業と同時にお土産としてもれなく借金が着いてくる。貧困の連鎖を産んでいるのは、義務教育年齢あたりで塾に通えないとか学習環境が整わないといった個々の受給世帯の問題よりも、高校以降の人生設計が極端に縛られていることによると考えるのが妥当だ。

■ということで、この制度上の制約を無くそうという話でした。(水曜日)