漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

フォーラム「不登校、みんなどうしてる」

■お日柄も良く、フォーラム日和。かねてより勉強会仲間で準備していた不登校フォーラム「不登校、みんなどうしてる?」に手伝いを兼ねて出席。遅くなったが、その報告を。

■保護者・フリースクール・研究者という取り合わせで話しを聞き、その後質疑応答をした。保護者の話は正に現在進行形で周囲にいる人から傷つけられるエピソードが語られた。会場の反応を見ていると賛同するようにうなずく人もいた。不登校に対する施策や報道では「ムリに登校させない」「学習機会を保障する」「社会的自立を目指す」「問題行動と見なさない」など柔軟な対応に変化していることを感じさせる言葉が多くなっていると、漂流教室を運営してきた20年以上を通して感じている。しかし、当事者においては本人も家庭も(場合によっては学校も)従前より変化の無い辛いエピソードがこのように相変わらず聞こえてくる。今回のフォーラムの参加者は150名以上とこうしたイベントでは大規模なものになったが、社会的に発言力のある者によって不登校の脱臭化が行われ、不登校の現実とイメージの乖離が進んでいる現状に抵抗する力が潜在していてそれは日々大きくなっているのではないかと思う。

■今回の保護者の話でこれまでに無かった視点は、不登校ビジネスに対する保護者からの批判だった。ネットを利用していると検索エンジンから勝手に推薦される「不登校は必ず治る」といった宣伝惹句に心惹かれて、子供や学校との状況の悪化に至る人は少なくない。経済的にダメージを負うこともある。それに対して保護者間で批判的に捉えることが始まるのは、大事なことだと思う。

フリースクールは札幌自由が丘学園のスタッフが話をし、不登校の時に子供自身や保護者が抱く、学習や人間関係などにまつわる不安に対して「大丈夫」と断言してくれた。札幌自由が丘学園の25年以上の歴史を振り返れば、子供が大人になっていく様子を多く語ることができる。また、フリースクールに通い出した子供が元々持っているものを発揮するためには今を楽しく過ごすことが大事であるという視点は、フリースクールの選び方・使い方を考える時の指針として大事にしてもらえると、同業者としてうれしい。

■研究者としては、北大教育学部の加藤弘通氏が話しをした。文科省通達の「不登校は問題行動ではない」という文言をまず紹介したのは、良かった。この文言もまた上に書いたような不登校の脱臭化に一役買っている時があるが、それを元に考えると学校や家庭はどう変わるべきかという現実検討の足場として使うというのは大事な視点だ。また、不登校が不利にならない社会を作るという提言で、不登校に対して社会モデルで対応を考えるという視点をこのフォーラムに持ち込んでもらうことができた。例えば、不登校になった場合に親、特に母親、が働きづらくなる状況や、適応指導教室職員の数が不登校児童生徒数の増加に対して追いついていないという情報などは、子供の心理的対応だけでは不登校を巡る問題を語りきれないことを会場に伝えてくれた。

■後半の質疑応答は付箋でたくさん寄せられた質問の中から、暴力への対応・父の存在・ゲームやSNSをどう考えるか・学校との関係・進路について・行政に期待する支援・フリースクールに通っていなくて大丈夫か・不登校は何故増えているかについて取り上げた。それぞれについて登壇者が話したことを採録することはしない。ただ、これらの質問はこうした不登校イベントでのFAQであり、それにどう答えるかが時代と人によって変化してきた。今回の答えはその中でも最上のものの一つだったと思う。録音・録画はされているので、機会があれば是非聞いてみてもらいたい。

■終了後の関係者打ち上げは、日本酒を飲み過ぎた。帰宅時、ふらふらであった。(土曜日)