漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

基礎、地盤から考える

■昨日、小樽商科大学でゲスト講師をしてきました。科目は「教育原理」。

■まずは不登校の外郭を説明し、次いで不登校対策の変遷をざっくり解説。この40年で不登校対応は「学校復帰を目指した指導」から「社会的自立を目指した支援」へ変化し、現在は文科省経産省、こども家庭庁のみっつの省庁がかかわっています。キーワードは「誰ひとり取り残さない」。NPOもそのためのチームに組み込まれ、千葉県のように条例でフリースクールの位置づけを定めたり、長野県のように認証制を検討したりしている自治体も出てきました。

■もっともそれぞれに温度差はあります。文科省は学校を中心としたチーム編成を崩していませんが、経産省は個別最適化にはっきり舵を切っている。こども家庭庁は居場所によるサポートと家庭支援。どれにも出てくるのがデータの蓄積と活用です。

■自分の思考のクセもあり、ネガティブな説明が多めでした。でも、施策が進んだからこそ出てきた課題とも言えます。選択肢がないときに選択肢が増えた際の課題は見えない。大きく見れば状況はよくなっているのかもしれません。そう思いつつ、「支援」の名のもと、個人の生活にじんわりと行政が入り込み、からめとられていくようで、どうしても警戒が先に立ちます。

■最後に別方向からの話をひとつしました。子供が減る。教師のなり手がいない。老朽化した校舎を建て直すお金がない。不登校云々は関係なく、今後、学校教育の形は強制的に変わるでしょう。それはどんな形になるか。公教育とはなんなのか。公教育に必要な要素はなにか。考えてみようと話しましたが、いきなりそんなこと言われても困ったかもしれない。

■建物に喩えると、不登校対策もそうですが、たいていは上屋をどうするといった話になります。増築したりリフォームしたり。でも、建物の基礎、あるいは基礎を打ち込んだ地盤についても考えなくちゃいけない。それは哲学であり、教育とはそもそもなにかを問うことでしょう。「教育原理」だからね。そういった答のない疑問を掘り下げるのもいいんじゃないかしら。もちろん俺にも刺激になる。山田もほかの大学で講義をしているはず。どんな話をしたんだろうか。