漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

出席認定教材

■ひさしぶりに晴れた札幌。朝から眠いが仕事をせねば。

■チャレンジなどの家庭学習教材を取っている不登校の子供は結構いて、でもたいがい手をつけない。授業を受けていないので解けないということもあるし、そもそも本人は望んでいないが、学校を休む条件に入会するしかなかったということもある。

■ところで、「IT企業などが自治体と連携し、インターネットを使って、不登校の子どもの学習支援や、生活状況の把握を行う取り組みが、全国で試験的に始まっている」んだそうだ。この日誌でも何度か話題にしたクラスジャパンもそうだし、学研が協力する「パルステップ」なるサービスもある。いずれも「自治体公認」にすることで、家庭学習を「出席扱い」とすることを狙う。

■ICTを利用した学習を出席扱いにできる仕組みは10年以上前からあった。ただ、教材を含め環境が整っていなかった。一方で、子供が手をつけないからと学習教材の継続購入をやめてしまう家庭がある。だったら教材に「出席扱い」の付加価値をつければ、やめづらくなるのではないか。そう考えた人がいたかどうかは知らない。だが、できあがったのはそういうものだ。

こちらの記事には「ネットを使った不登校児支援、自治体と連携相次ぐ 登校せずとも出席扱い」とある。支援? 出席をかたにとった半強制的な学習だろう。「ボット」と呼ばれるキャラクターと子供の会話を通して、教師が子供の様子を知ることもできる。

「これまでは、不登校の子どもの様子を知るには家庭訪問ぐらいしかなかったが、システムを導入し、子どもが昨日何時に寝たのか、どこまで勉強を理解しているのか、学校にいながらわかるようになった。効果を実感している」

仙台市高砂中学校の伊藤陽子教諭は、取材に対し、新たなシステムを取り入れたことで、不登校の子どもへの指導がしやすくなったと話した。

学力を上げるためには規則正しい生活から。「早寝早起き朝ごはん」に代表される、学力中心の生活管理体制だ。

■個人的には「やりすぎ」と感じている。ここまで学校制度に沿ったものにしてしまったら、保護者は喜ぶかもしれないが、子供は受けつけまい。「パルステップに入ったんですけど、子供がちっとも勉強しないので手伝ってもらえませんか」と漂流教室に連絡が来るケースはありそうだ。ただ、反発できる子はいいが、断りきれず引き受けて追いつめられ死を選ぶといったことも考えられる。そうじゃなくとも親子のあいだに深刻なバトルを生む危険性は十分ある。これまでの不登校の歴史を知っていればこんな形はとらない。

■学校に行っている、行っていないにかかわらず、子供が興味のおもむくままに、もしくは自身の必要性のもとに自ら学べる仕組みはあってほしい。ICTはそのひとつになれるだろう(ただ、経済格差は明確にあらわれる)。不登校の子供が教師と打ちとけたきっかけは、「指導」を離れた、なんでもない会話からだったりする。このツールをつかってもっと違うことができそうに思うが、「学力」「進路」「指導」と、大人の不安をもとに組んだプログラムに子供を奉仕させるものとなってしまった。この動きを後押ししているのが、「これまでの不登校の歴史」を知っているはずのフリースクールが進める「教育機会確保法」なんだよな。来年度の見直しできっちりねじを巻かないとダメだろ、これ。