漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

市教委の変化

■今年も社会教育主事講習で講師を務めてきた。その報告の前に、8月1日(月)にあった札幌市の教員研修の報告を。「不登校への対応〜関係機関と学校の連携〜」という内容で、相談指導教室の指導員や星槎高校の武内さん、札幌若者サポートステーションの山名さんも一緒に登壇した。

■気になったのは、相談指導教室、教育支援センターの対応の変化だった。札幌市は3年前に初めて学校外の不登校施設(それまでは、学校の中にある『相談支援学級』だけだった)をつくった。従来の施設に比べ、居場所機能を前面に打ち出し、学校を通さなくとも相談、見学、利用ができるようにした。また、相談指導教室も順次、同じような教育支援センターへ変えていくという話だった。検討委員のひとりだったので、よく覚えている。

■それが、今回聞いた話ではすっかり変わっていた。目的は「学校復帰」であり、「登校しなさい」というスタンスで子供と関わる。集団活動が基本のため、個別の対応はしない。「特別な支援が必要と判断される」児童生徒はほかの機関を紹介する。学習活動は行うが、それが「学力を保障する内容ではな」く、「机に座って学習することから離れないようにする」ことが狙いである。申し込みは学校を経由することにする。説明したのは、市教委の教育相談担当課職員。

■次いで登壇した相談指導教室の指導員は子供たちに心がけさせていることとして、

  • あいさつを元気よくする(見学時もだそう)
  • 勉強に集中して取り組む
  • 他の人と遊んだり、話したりする
  • 生活のリズムを整え、休まず通室できるようにする

を挙げ、生徒と保護者には、

  • 可能な限り在籍校に登校する努力を
  • できるだけテストを受ける
  • 提出物を忘れずに提出
  • 家庭学習をできるだけしてほしい

といったことを伝えていると話していた(それができていれば、そもそも不登校で困っていない)。「学校で行うような授業はできない」というものもあった。実際は確かにそうだろう。だが、わざわざ伝えることで落胆する生徒や保護者は少なくないと思う。せめて「学校で行うような授業はしない」と言ってくれたらと思うが、個別対応をしないのなら、それも難しいのか。

■これだけ厳しくすればさもありなん。登録人数は6施設あわせて122人、通っているのは79人とのこと(札幌市の不登校児童生徒数は1800人)。数年前は、ある相談指導教室ひとつで登録が80名を超えていた。いま、そこは20名を切っている。

■これまでは違った。「公的機関ですから学校復帰しなくていいとは言えないんですが、まあ、でもここに来てますしね(むにゃむにゃ)」という感じだったのが、なぜ急変したのか。市教委のトップが変わったのか。それとも文科省絡みなのか。文科省は教育支援センターの整備、強化を進めている。「学校復帰」を強く押し出す体制にしようとしているのだろうか。はっきりしたことはわからないが、とにかく驚いた。確認のため札幌市のも、よその自治体の情報もほしい。