■通信に載せた文章ですが、今年は申年なので、一つ、サルの思い出を。
■大学3年の時に、中国旅行に行きました。北京の天安門の横を歩いていた時、壁ぎわにいた人が笛を吹き始めました。それを見ていた人たちの中から、鉦でリズムを取る人、歌を歌いだす人が一人また一人と出てきて、突然の街中セッションが始まりました。多分、中国人ならみんな知っている曲をやっていたのでしょう。見ている人たちも歌ったり踊ったりしていました。
■そこに通りかかった自転車のおじさんがいまして、見ると籠に子ザルを乗せていました。おじさんと子ザルもセッションの横で止まり、音楽を聴いていました。すると、おじさんは子ザルを籠から下し、音を出している人たちの中に進むように促しました。そこで子ザルはぴょんぴょん飛び跳ねたり、手をたたいたり楽し気に遊ぶのです。
■興味のある人は飛び込んでいい。少し聞いていなくなってもいい。お金は少しも絡まない。音楽と演芸がごちゃ混ぜになった、時間と空間が一国の首都の路上に突然現れる不思議。何曲か演奏し、そこでお開きになりました。集まっていた人が散っていきます。自分もとても満足した気持ちで回りを見ると、街のあちこちで人が集っています。こういう街っていいなあ、としみじみ思いました。(水曜日)