不登校増加 兆候逃さず相談相手に(08/25)
減り続けてきた小中学生の不登校が6年ぶりに増加に転じた。
文部科学省の学校基本調査(速報)で、2013年度は前年度より7千人増えて12万人になった。道内も4千人を超えた。夏休み明けは特に不登校になりやすいとされる。学校と保護者、教育委員会が連携して児童生徒の兆候を見逃さず、不安に寄り添う努力が欠かせない。
「脱ゆとり教育」で学習負担が増している。影響はないのか。文科省には増加の背景を分析し、対応策の立案を急いでもらいたい。
一時的に学校に通えなくても居場所や学習機会が確保され、進路に支障が出ない体制づくりも一層進めなくてはならない。
不登校の原因は、いじめや学校・家庭での人間関係、学業不振など各人それぞれで異なる。
何より大事なのは、友達や親、教師が行動や言動からサインを察知し、悩みに耳を傾けることだ。不登校経験者の追跡調査では、3人に1人が「生活リズムの乱れがあった」と振り返っている。
特にゲームやスマートフォンに夜更けまで興じることのないよう学級内や家庭であらかじめルールを設けておくことが望ましい。
教師の目配りが効く少人数学級化は、不登校の減少にも有効とされる。市町村にとって財源の捻出が大変なことは分かるが、実現に努力してほしい。
子どもが不登校になった場合、登校を促すばかりが解決になると限らない。フリースクールや教育委員会の適応指導教室に通っても条件を満たせば出席扱いになる。
保護者は選択肢が複数あることを念頭に置いて、子ども本位の環境づくりを心がけるべきだ。
問題は経営難からフリースクールの閉鎖が相次いでいることだ。もともと、空白の地域もある。札幌市や福岡県などにならい、道や市町村には助成を求めたい。
不登校経験者の進学率は1990年代から大幅に高まった。とはいえ、追跡調査では高校進学率の85%に対し、大学は19%とまだまだ低い。高校時代のサポートも手厚くしていくことが大事だ。
文科省が過去に行ったアンケートでは、中学卒業時に不登校だった人の4割が「不登校の経験はマイナスではなかった」と答えた。
つまずきをむしろバネに、前向きに生きようとする人が相当数いることを教育界も経済界も受け止め、支えていくべきだ。
多少の回り道が将来の可能性を狭める社会であってはならない。
■社説に載ったのはおそらく6年ぶりで、そのときの出だしは「不登校増加に歯止めがかからない」だった。今回は「6年ぶりに増加に転じた」で、要は増えたら載る。不登校が増えるのは問題だ、という姿勢なのがわかる。そのあたりは「つまずき」「前向き」「多少の回り道」といった言葉遣いからもうかがえる。
■一方で、学校外の仕組みの充実や「子ども本位の環境づくり」の提案、フリースクールへの助成を促すなど、学校復帰一辺倒ではないこともわかる。前回は「学びの場はある程度多様であっていい」という言い方で、フリースクールも金銭援助までは踏み込まなかったのだ。時代は動いているなと思う。
■前の社説について内容が暗いと書いた。学校に行けず苦しんでいる、苦しみを救おう、という見方しかない。もっと日々の生活を楽しくという方向だってあっていい。それに学校に行っていれば苦しんでない、というわけでもないだろうと書いた。今回はそこまで暗くない。それもよかった。「不安に寄り添う」「悩みに耳を傾ける」という言葉は出てくるが、フリースクールだって他人のことは言えない。ただ、「サインを見逃さず話を聞く」ということがそんなにすぐにできるかな、という思いはある。能力じゃなく時間の問題で。
■相談するためには雑談がいる、という話はここでも何度か書いた。人は困ったから相談するのじゃない。普段の話の延長で困った話が出てくる。「困った話を聞いてやろう」「この話は不登校のサインか」なんて身構えてる人には最初から話さない。だから、サインを見逃さないためには、先生と生徒がしょっちゅうどうでもいい話をしている必要がある。でも、そんなヒマあるのかな。少人数学級なら、生徒ひとり当たりの時間を今よりは多く取れるかもしれないけれど、それより学校生活を根本的にヒマにする提言をしてほしかった。
■さて、次に社説に不登校が載るのはいつの日か。また少しでも進んでいると、ここでこうして発言する甲斐もあるというものです。