■宮部みゆき編『贈る物語 Terror』というホラーアンソロジーを読んでいたら、期せずしていい文章に出会ったので抜き書き。子供と恐怖について開設した中にあったもの。
どうして「少女」はしんどいのか。それはたぶん、頭のなかに、長い人生のうちで一番厳しい物差しがあって、それで自分自身や他者をはからずにはいられない――また、他者からもそうされていることがわかってしまうという時期だからかもしれません。それは本来「少年」だって同じはずなんだけど、「少女」の物差しはことのほか目盛りが細かいので、その分ストレスがたまりやすいのかな――と、今では思ったりするのです。
現在進行形の「少女」の皆さん。くたびれることも多いでしょうが、頑張って乗り切ってくださいね。疲れた時には本を読みましょう。本を読むと、頭のなかの物差しの数が増えます。そうすると、あまりにしんどいときには、いちばん目の粗くて、自分に優しい物差しを選んで使えるようになりますからね。
■物差しを複数持って、そのときそのときで楽な方を使う、というのはこの日誌でも何度か書いた(面倒だからひとつしか探さなかったけど)。でも、この文章の方がすっと理解できる。やっぱり作家は違うな。あとは愛情の深さだろうか。
■本を読むのもいいけれど、人と会っても物差しの数が増える。人間ライブラリーだっけ。あれが面白そうだと思ったのは、イメージ的にそれが分かりやすかったからかな。一度やってみたいと思ってるんだけど、もしかして「題名のない発表会」も同じなのかもしれない。「しゃかいさんか」も明らかにそれを狙った企画だし。
■子供が厳しい物差しを持つのは、まさに基準をつくるまっただ中にいるからだろう。本当に子供って融通が利かないんだ。頭かたいし。でも、そこでしっかりした基準を築いておかないと、そのあと別の物差しを入れることができないんだよね。他人の物差しを使うためには、比べるものが自分の中になくちゃいけない。自分の物差しがあいまいなまま他人の物差しを使おうとすると、あっちへ寄りかかり、こっちへ依存して、他人のせいにしながらふらふらするだけになってしまうので。
■もうひとつ。子供を見る大人の目が厳しいと、子供の物差しの目盛りも細かくなる。どの道、厳しい物差しをつくるんだから、周りは少し手を抜いてやろうぜ、と思います。全員が全員じゃなくていいし、毎回毎回じゃなくていいけど、自分の中のわりと粗めの物差しを使ってやってもいいんじゃないかな。
贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/12/07
- メディア: 文庫
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