漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

北海道FSN講演会+フォーラム 高岡健氏「発達障害『理解』の何が問題か」

■11月19日土曜日に開かれた北海道フリースクール等ネットワーク主催の講演会+シンポジウムレポート。岐阜大の高岡健氏が不登校発達障害についてのわかりやすい講演を行って、その後三カ所のフリースクールから来たパネラーが自分たちの関わりについて話し合いました。

■高岡さんはまず不登校に対する理解について話してくれました。不登校は学校が社会に「馴染んでいない」のが原因であるとのこと。60年代に不登校児童生徒数が減少したのは、明治以来続いてきた日本の第二次産業向けの教育と世の中の産業構造が馴染んでいたからであって、70年代に入り第三次産業がメインになると、学校・教育が世の中と馴染まなくなったので、不登校が増えたと理解できるそうです。

■それを踏まえた上で、発達障害についての話。発達障害の中でも自閉症スペクトラムについての解説がメインでした。自閉症スペクトラムの中心は、対人関係のハードルとなる三つ組みの特徴にあります。以下の特徴が三才児以前から出ているかどうかを、医者は診断の時に見なければならないそうです。一つが社会的交流の苦手さ。これは視線が合わない/一人遊びが多い/一斉行動が苦手などの行動にでます。二つ目はコミュニケーションの苦手さ。これは言語・非言語の両コミュニケーションに見られます。例えば、「どうしてそんなことをしたの?」という疑問文の持つ「そんなことをしてはいけない」という裏の意味を読み取れないとか、目配せや表情の読み取りが出来ないなどです。三つ目が想像力の狭さと深さです。一見わがままに見える行動がこだわりに基づくものである場合があります。例えば、出かけるまでに一定の手順でなければできず(歯磨きの後にトイレ、でなければダメとか)家族のトラブルの元になるなどは、順番を変えたらどうなるかを想像できないが故だったりします。以上三つの特徴の他に、付随する特徴として、視覚情報処理が優位である/不器用・器用の差が激しい/感覚過敏/多動の傾向などがあります。

■講演の後は休憩を挟んでシンポジウム。漂流教室・札幌自由が丘・どんぐり広場の三つがパネラーで、司会は高岡さん。まずそれぞれの活動について紹介し、それについて高岡さんから質問がありました。漂流教室の活動について興味を持ってくれたようで、色々と質問が多くてびっくりしました。

■その後、会場との質疑応答が四つほど。印象的だったのは、教師からの「どれくらいの学力が必要だと思っているか」との質問。この質問で浮かんでくることは色々あって、学力と就職は繋がるのかとか、学びはどこで行われるものなのかとか、パネラーの人は多面的に回答をしていました。質問した人は最後に「生活のために、小学校3年までの学力は必要だと思います」と話して途中退場したので、どう思ったかはわかりませんが。(漂流通信より)