漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

10周年だけど

■31日に行われた、札幌市が制定したフリースクール等民間施設への補助の説明会に出席した。札幌市が説明した制度の概要は、漂流教室についていえば、利用することが難しいものだった。

■まず、訪問支援をしている施設は対象にならない。これは「どのような効果があるのか確かめるのが難しいため」だそうだ。そして、不登校児童生徒がいても、フリースペースは対象外だという。これは「カリキュラムが無いので、効果があるのかわからないから」だそうだ。

■この制度の要綱をネット等で見ることはまだできないのだが、目的は不登校児童生徒の社会的自立で、それにつながる相談・指導を行っている施設への補助と書いてある。説明の内容からするとこの「社会的自立」という五文字は「学力向上」とか「学習支援」という四文字と読み替えていいのか質問したが、それには言葉を濁された。だが、どうも訪問やフリースペースではそれが見えないということらしい。ならば、それが見えればいいのか、それには何が必要であるのかと話をして、最終的には・フリースペースについては、児童生徒との対応で効果があると確かめるために何が必要であるのか検討して連絡する・訪問支援は今後の検討課題とするという二つは約束してもらった。

■これが教育委員会とのやりとりであれば、「あー、はいはい」とあきらめは早い。学校は学習を通じて社会的自立を目指すという論理で彼らは動くのだから。しかし、これは子ども未来局とのやりとりだ。フリースクールとのやり取りは教育委員会よりもずっと日常的にやっていたと思ったし、児童相談所とは深い付き合いだとも思っていた。訪問支援の重要性だって認識しているはずだ。なのに、この制度。ダブルスタンダードとしか言いようがない。

漂流教室だけでなく、他のフリースクールにとってもこの制度は使いづらい。新規で職員を入れる時や新たな場所を使う時にしか補助は出ない。カウンセラーを入れるために使える補助の要件は、臨床心理士精神科医等あるいはそれに準じた経歴が細かく指定されている。そして、法人格を持ち二年以上の活動実績が必要だ。こういう制度でいながら、「不登校児童生徒の受け皿を増やす」のが目的だそうだ。新規のフリースクールは絶対使えないし、既存のフリースクールも拡大していく傾向のところしか使えない。札幌にあるフリースクールのうち、いったいどれだけの団体がこれをクリアできるというのか、子ども未来局は調べてみると良い。

■最後の落ちはこの制度の「フリースクール等民間施設事業費補助要綱」の「等」はどうしてつけたのかに対する、担当課長の返答だ。曰く「団体名称に『フリースクール』とついていないところもあるが、そうした団体も対象であるので付けた」。「あー、そうですね」と棒読み口調で答えるしか無かった。この要綱に、如何に心が通っていないか良くわかるエピソードだと思う。ちょっとこの状況はあんまりなので、もう一度保護者の方々と要望を出し、場合によっては市長への意見を出さねばならないと思っている。

■こんなところでがっくり来つつ、1日は漂流教室10周年の日だった。特に何もしなかったけれど、ツイッターフェイスブックではお祝いしてもらい、ありがとうございます。さて、また仕事すっか。(2日朝)