漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

パブコメクラブ

■朝のマラソンは続行中。寒くて走れなくなるまではやろう。それにしても、朝五時は暗い。そのうち、六時で暗い中を走ることになるのか。

■寒くなり、漂着教室の暖房を今までに無いくらいつけている。子供らは余り寒いと言わないが、こちらが寒い。ふと外を見ると、雨ではないものがちらついている。あ、と思って窓を開けたら、細かい雪だった。

■スタッフ志望の人がちょろちょろ来てくれて、研修もしている。もっと来ていいのですよ…。

■明日は札幌市の第3次札幌新まちづくり計画に対するパブリックコメントの締め切り日。不登校や引きこもり、フリースクール等に対する施策に意見する機会です。どのような施策があるかは、ここを見てください。また、市長のマニフェストには、不登校の対策として退職教員を活用した「心のサポーター」を2014年までに全中学校に配置するとも。このあたりの動きについて、簡単でもいいのでこちらから意見を。

■自分の書いたコメントが長文になったので、多分全文そのままでは掲載されない。それも悔しいので、ここに残しておく。12月に市が回答を出したときに、どこまで答えてくれるのか見てみよう。

NPO法人訪問型フリースクール漂流教室を運営している経験を踏まえ、第3次まちづくり計画案の次の点に対して意見を述べます。

「政策目標1 子どもの笑顔があふれる街」のうち、1-2-2「健やかな育ちの推進」中
1、「子どもの学びの環境づくり」について
 「不登校児童生徒の受け皿となっているフリースクールなど民間施設に対する支援を実施することにより」とあるが、この事業で想定する「子ども」は「不登校児童生徒」のみであるのか。学びの環境を整えなければならない子どもは、不登校児童生徒だけでなく、発達障害を持つ子供や経済的困難を抱えた子供、養護施設や乳児院で育つ子供などが考えられる。また、高校或いはそれ以上の青年期までの育ちを見据えた支援が必要なことも指摘しておく。そして、フリースクール不登校児童生徒のみならずこうした子供・青年を支援していることは、教育委員会フリースクールの連携協力を行う会議や、教育委員会職員・教育センター職員のフリースクール訪問などを通じて、市当局者も既に把握していることであろう。
 然るに、この事業では「学校教育等を補完する学びの環境」を整えるとあり、そのために「フリースクール等に対する支援の仕組みの創設」を行うとある。この文言では、対象となる子供も、支援を必要とする人たちに対してフリースクールが果たしてきた役割・効果も限定的にしか捉えていない。フリースクールだけではなく、民間有志が取り組んできた支援(母子会による「まなトピア」や北大で行われている「土曜教室」等)があることも忘れてはならない。
 そこで、この事業が行う「環境づくり」は、「不登校発達障害・経済的困難等で学びに支援を必要とする子供たち」のために行われるものであることを明記し、そのために「フリースクールなど民間で行われている支援やその利用をより充実させる仕組みの創設」を行うとすることを、私は提案する。計画事業費も今一度検討する必要がある。

2、「教育支援センターの設置」について
 既存の「教育センター」「相談指導学級」との役割分担が不明確であると考える。不登校児童生徒の居場所を増やすのであれば、相談指導学級の増設で済む。「学校以外の場における子ども支援のあり方を調査研究」するのであれば、教育センターの職員を増員してプロジェクトチームを作り、フリースクール等民間施設と協力して行えばよい。
 またこの事業は学校教育部の管轄であることから義務教育年齢のみの不登校児童生徒に対する事業であろう。しかし、最早義務教育年齢だけでは育ちの支援として不十分なのは、子ども未来局や生涯学習部との連携を行っているのだから明白であるはずなのに、それを対象にしたセンター設置は大いに疑問である。ましてや、そこに通ってくる児童生徒を調査研究対象にするという目的の元で「不安や悩み等を和らげる居場所」ができるのかについては、フリースペースを運営している経験からは再考を求めざるを得ない。もし、この事業について、他自治体における前例やモデルとした事業があるなら、それを教えて欲しい。

3、「心のサポーター配置モデル事業」について
 1から3までは全て、市が不登校児童生徒対策として計画している政策であるが、1及び2と3の間で決定的に違うのはその計画事業費であろう。施設の設置や多くの連携が必要である1及び2の方が計画事業費が多くなるのが自然だと私は考えるのだが、3の方が多い。二億以上という事業費の根拠を明確にしてほしい。
 次にこの事業の性質について、四点意見を述べたい。
 一点目。対象とする児童生徒がスクールカウンセラーともスクールソーシャルワーカーとも重複するというのに、それとの関連が明確でない。このままでは、それぞれの仕組みを児童生徒・家庭・教師がどのように利用するべきかわからないままの見切り発車になる。SC、SSWも含めた児童生徒・家庭・教師を支援する仕組みの見取り図を明示するべきである。
 二点目。不登校やその心配のある子供への対応として、学校からの働きかけを強化するためにこの事業を行うというが、その働きかけは後段の「子どもが元気に登校できる環境を整えます」という文言からすると、登校圧力になることを危惧する。また、SCやSSWの関わりと心のサポーターの関わりがずれることは、SCやSSWと深く繋がって活動している私にしてみると、かなりあり得る話だと想定している。かたやゆっくりと育ちを見ていきましょう、かたやがんばって来てみようよ、などという言葉がけがあった時、その三者のみならず子供や家庭にも軋轢が生まれる。SC、SSWとの連携を考えるのであれば、「元気に登校できる環境を整えます」ではなく「元気に過ごすことができる環境を整えます」にすべきである。さもなくば「心のサポーター」ではなく「登校サポーター」にしてほしい。
 三点目。この事業が採用する人材は「退職教員や地域人材」ということだが、不登校やその心配のある子供と接触・交流するのであれば、一般的な倫理的・道徳的観念を元に関わってもほぼうまく行かないのが私の経験則としてある。むしろ、そうした観念から自由な人の方がよい関わりを持つことは、相談指導学級やフリースクールでの実践からも導かれていて、それは市当局者も知っていると私は思っている。ところが「退職教員や地域人材」でこのような事業に関わろうとする人にはそうした信念を持つ人が比較的多いことも、私は経験から感じている。ここは、既存の資格に囚われず、「心のサポーター」としてふさわしい人を選定する制度を作ることを提案する。
 四点目。これまでの三点を眺めると、総じてこの事業は、退職教員への活躍の場を公的に提供するという感が否めない。そうしたことは、個々人が自ら開拓するのが健全な市民活動に繋がるものであろう。市が莫大な公費を使ってまで制度を創設する必要は無い。教育委員会の事業であるならば、不登校対応の手本となるような実績を持つ先輩教師が、現役教師を支援して巡回するような制度がよいのではないか。