漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

「学校復帰」という言葉をめぐって

■クリスマスイブの12/24に道教委主催の不登校児童生徒支援対策協議会に出ました。道内の適応指導教室の指導員と希望する学校や教育委員会職員、フリースクール職員が集まって、道教委から不登校の現状や対策・有識者の講演・グループ討論を行うというものです。

■10/25に文部科学省が「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知を出したことは、日誌や通信でお伝えしています。今回はその内容について道教委がどう語るかに注目していたのですが、協議会が始まって早々に「後退している」の一言しか出てこなくなりました。

■まず驚いたのは、この通知で大事なことは学校復帰に向けた支援と学びの機会を作ることの二つだ、という話しでした。この通知はフリースクール全国ネットワークの理事たちが、教育機会確保法の理念に基づくならこれまでの不登校対策の文書にある「学校復帰」という文言は削除されるべきであると主張し、国会議員の力も借りて文部科学省に何度も働きかけて、ようやく実現したとその成果を誇ってきたものでした。それが、一言の下に否定されてしまいました。それどころか、言葉では民間との連携や多様な教育機会の確保などを謳いつつ、運用としてはむしろ学校復帰を目指すことが当然となっているように思われます。今回道教委が連携していると資料に掲載した民間団体も、学校復帰を目指していると明言している団体が複数あります。そのいずれもが協議会には出席していない一方で漂流教室は資料には掲載されておらず、口頭で今回参加していフリースクールとして紹介されたのでした。こうしたことをつらつら考えるに、教育機会確保法の制定を先導してきたフリースクールがもたらしたものは、フリースクール間の分断に留まらず、教育現場における旧態依然な不登校対応を巧妙な言葉遣いで覆い隠すという、反動的ともいえる地方での教育委員会の動きであると言えるでしょう。

■これはグループ討論にも現れていました。話し合う事例として出されるものは適応指導教室の指導員が現場で抱えている悩みであり、学校復帰を前提にして児童生徒の個人的状況をどう変化させるかが話し合いのメインとなるようにコントロールされた印象です。札幌自由が丘学園の職員は制度設計を問題に話し合おうとしましたが、ファシリテーターにそれはここで話しても意味がないと切り捨てられたそうです。

有識者として参加していた教育大札幌校の平野教授は講評で「再登校だけをゴールとしないことは学校が不要ということでは絶対ない」という言葉で、学校復帰を前提としないことをしっかり述べつつ教育委員会の在り方も折り込んでいましたが、フリースクールとしては彼らが「学校が不要ということでは絶対ない」という部分のみを拠り所にして指導をしていく未来が見えてしかたありません。それでも彼らと連携するとしたら、平野教授が同じく講評で出した「大人同士の関係」をどう作るかにかかっているかもしれません。不登校に関係する以外で教育委員会との繋がりをフリースクールが作ることが、巡り巡って不登校対応を柔軟なものにする、それが必要なのかもしれません。(月曜日)