■まず産経新聞のサイト記事より、教育再生会議メンバーの一人である国際教養大学理事長・学長 中嶋嶺雄氏の主張を抜粋。
去る10月18日の第1回会議で17人のメンバー全員が最初の意見表明をした際、メンバーの1人の私は次のように表明した。「教育基本法、これは実は中教審でも私、審議させていただきましたので、是非早急にこの教育基本法をきちんとしていただきたい。ただ若干注文がございますのは…『他国を尊重し』ということになりますと、いわば核実験をやったばかりの国も『尊重し』になります。中華文明がチベット文化を押しつぶしている。そういう国も尊重しなければいけないので、そこは『理解し』とか、ちょっと直せばいいことですので、その上で是非早く実現することが日本の教育再生の根本だと思います」(「第1回教育再生会議議事録」参照)。
いまさら政府案と民主党案をつき合わせて再検討するとなると、政府案全体に波及したり議論が振り出しに戻ってしまうので、それは出来ないというのが政府与党の見解だとしたら、右に見た「他国を尊重し」の個所を「他国を理解し」と2文字だけ交換するか、「他国の文化を尊重し」と「文化を」の3文字を加えることだけは、是非してほしいものである。時間が切迫しているので、私からの緊急提案とさせていただければ幸いである。
■次に官邸サイトにて公開されている教育再生会議議事録要旨より該当部分を抜粋。
(中嶋嶺雄委員)
私のいる国際教養大学は60%が外国人であり、すべて英語で授業、年に2回入学式をしている。総理のおっしゃる9月入学は大変夢のある、グローバルスタンダードにかなう提言である。
教育基本法をぜひ早急にきちんとしてほしい。「他国を尊重」の文言を少し手直しし、早急に成立させてほしい。
英語教育は早期教育の一環として根本的に立て直す必要がある。文部科学省は条件整備を相当つめており、まだ中間段階なので、中教審でまとまったら、ここでも意見を伺いたい。
■議事録については一般には要旨しか公開されていないようで、中嶋氏のようにメンバーには議事録そのものが渡っているということであろうか。太字にした部分の違いをごらんあれ。元の発言からは「尊重」という言葉を手直しする理由を「北朝鮮や中国のように、日本に対して脅威を与える国や他の文化を圧迫するような国は尊重するに値せず、そのような国を良しとする国民を作り出してはならないと私は考えるので」とまとめられるとぼくは思うのだが、この部分については要旨でカットされている。「最近『核兵器を持つことも考えた議論を』というような発言をしている議員がいるし、国内にいる他民族に数十年来の差別が根強く残っている国だから、日本を尊重することはできない」とどこかの国の人が言ったなら、「うちの歴史や現状をまず理解してほしい」と日本人は思うだろう。また、北朝鮮の人々全員が核兵器を日本に対し使うことや対日戦争を望んでいるわけではないだろうし、中国の人々が全員チベット等国内の少数民族について圧迫をしているわけでもない。各々の国が持つ国内事情や多様性を理解することに努力せず、報道されることのみに基づいて自分の脳内で作り上げたイメージで世界とつき合う日本人を作ろうというのか。「○○人」という脳内イメージだけに従い目の前にいる人を理解しようとしない態度は、レイシズムの第一歩だ。
■そして、このような形で発言をまとめようとする力がこの会議内にあるということにも注意しなければならない。最近の教育についての発言は、自分の頭でものを考える人間を育てることを学校にさせない「教育」を望むことにつながっていることが多い。ただ、それはとても巧妙に隠されていることが多い。注意せよ。