漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

法案の陰で

■教育機会確保法案とは別に、こんな記事が出ていた。以下、改行のみ改変。

文科省によるフリースクール等に関する検討会議の第10回会合が6月10日、都内で開かれた。学校以外の場での学習支援の課題や経済的支援について議論された。委員からは、検討会での議論の取りまとめには、経済的支援についての記述をしっかりと入れてほしいなどといった意見が出された。不登校児童生徒が通う場の提供を行っている機関・団体として、教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールなどの民間団体等が挙げられている。教育支援センターは、▽不登校児童生徒の集団生活への適応▽情緒の安定▽基礎学力の補充▽基本的生活習慣の改善――を目的に教育相談や適応指導、教科学習の指導、グループ活動などを行っている。平成26年度では、約1万5千人の義務教育段階の児童生徒が支援を受けている。これについて委員からは「教育支援センターの役割もしっかり考えていかなければいけない」「教育支援センターと自治体、民間との連携や協働が必要」との声が聞かれた。

経済的な理由で、民間の団体等に通いたくても通えない子どもがいる現状について、委員からは「経済的支援についての文言を、取りまとめにしっかりと入れてほしい」との意見が出た。教育ジャーナリストの品川裕香委員は「学校に戻れなくても、社会に出て自立して生きていけるのが大事。社会的自立についてより深い記述をしてほしい」と求めた。「学校現場と子どもたちをつなげる取り組みも必要ではないか」と述べる委員もいた。他の委員からは「次回の議論では、『連携』について深めていけたら」との意見が出た。

今後の検討課題として挙げられているのは、(1)フリースクール等での学習に関する制度上の位置付け(2)子どもたちへの学習支援の在り方(3)経済的支援の在り方――など。

■今回で10回目なのだが、第5回で今後の検討の流れがまとまっている。「子どもたちへの学習支援のあり方」特に学校や教育委員会とのネットワーク構築という点に関して話すということになっているので、上記のような検討が行われているのだが、出席しているフリースクール関係者はこの流れで良いと考えているのだろうか。法案の陰に隠れて、なかなか聞いたことが無かったのだよ。

文科省とその下部組織たる学校にとっては、教育は自分たちが行っているものであり、その行政的権力を及ぼすことができる範囲も教育の範疇に限るわけだ。だから、フリースクールが行っている様々な実践を「教育」とは言わず、「学習支援」のみに限定して捉えようとしているのだろう。今はこの枠組みの中でしか話ができませんよ、ということを明らかにした上で、今後は「教育」の範囲が広がる方向性で話しをするというならいいのだが、これまでの経緯を見ているとどうも違うようだ。フリースクールとしては、自分たちの実践は学習支援や不登校の子供への対応に留まるものではないと言い続けて、学習支援の話が終わったらそれ以外の点についての話をするように方向性を決めないと、後悔することになるだろう。この話こそ、「教育機会確保法案」の話の時に出ていた「アリの一穴」の例え話を思い出さねばならないはずだ。

■それにしても、会議の議論要旨を見ていると、どの委員が話しているかはわからないが、子供は皆学校に戻りたがっているという気持ち悪い思い込みや集団の学びにどう戻すかということしか頭に無いような話が散見される。そういう人を委員に選ぶのは、そういう意見がまだまだ国民の大勢を占めますよ、という文科省の意思表示なのかね。(木曜日)