漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

教育センター教育講演会

■「特別な支援が必要な子に親や教師がしていいこと、悪いこと〜本当に大丈夫? その支援〜」なる講演会を傍聴。講師は臨床児童精神医学研究所所長の山崎晃資氏。主催は札幌市教育センター。定員400名の講堂がいっぱいになる盛況ぶり。

■聴衆が多かったのは演題にも関係があると思う。ちょっとドギツイこの演題は主催者側の用意らしい。不安を煽るのはコマーシャルの常道だが、こういう会ではどうだろう。余り上品とはいえない。

■内容とタイトルはさほど関連せず。レジュメの項目は順に、1)乳幼児期の子ども達、2)学齢期の子ども達−適正就学指導委員会で気づくこと−、3)発達障害者支援センターで出会う症例、4)単科精神科病院における広汎性発達障害の人々への対応、5)広汎性発達障害の人々の内的世界。もっとも時間が足りず、4)はさわりだけ、5)は全く触れずに終わった。

■通底していたのは、医療機関教育機関のいわば"切り捨て"ともいうべき対応への怒り。「していいこと、悪いこと」に繋がるといえば繋がるか。安直な診断、経費削減としか思えない特別支援教育、年齢を境に支援がなくなることなどなど。山崎氏の門を叩くのは、そうした結果二進も三進もいかなくなった人たちなのだろう。「彼らとはずっと長く付き合うつもりでいる」「彼らに関わるのは面白い」。山田と同じことを言うのが面白かった。

■少年事件についても警鐘を鳴らしていた。発達歴も何もとってないのに、余りに安易にアスペルガーと診断する例が多すぎるとのこと。他方、ビル・ゲイツアスペルガーだっただの、これも方向の違いだけで実は同じことではないか。いずれ偏見への道だ。

■個々のトピックに特に目新しいものはなかった。乳幼児期には感覚統合療法が効果的であり、そのヒントは昔の遊びにあるとか、子育ては自分の子供時代を生き直すこととか、強いこだわりを抑えつけるのは無理で、それより社会的に支障のないものに移行させた方がよいとか、どれもどこかで聞いた話だ。最も興味を惹かれたのは、家庭内暴力について「本当に入所施設は不要なのか?」という項目だったのだが、時間の都合でこれもカット。質疑応答もなかったため少々欲求不満だが、久々のパワーポイントを使わない講演で、そこは満足。著書はたくさんあるので、後は勝手に勉強しよう。