漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

不登校フォーラム

■主催文部科学省・北海道教育委員会のこのフォーラム、出席者は北海道各地の小中高教師、適応指導教室職員、スクールカウンセラー、民間施設職員だった。午前中は基調講演「地域社会における不登校児童生徒への支援の在り方」、午後は三つのテーマ①学校、教育支援センター(適応指導教室)、NPO・民間施設等関係機関による連携の一層の促進について②家庭にひきこもりがちな不登校児童生徒への支援について③LD、ADHD等の疑いのある不登校児童生徒への支援について について分科会で討議をした。漂流教室は分科会②③に分かれて出席した。

■基調講演は、学校内で不登校児童生徒支援を行うサポートチームをどのように作っていくかを専門にしてきた東京理科大学八並光俊教授が行った。聞くにあたって、学校(特に義務教育期間)が終了してから、このサポートチームがどのように振舞うと考えているのか気をつけて聞こうと思った。学校外の視点から見ると、教師達の語る不登校が自分達の関わることができる期間内に子供をどう復帰させるかという話にしかなっておらず、子供がどのような支援を求めているかというニーズに基づいた話が出てこないことがしばしばあるのだ。サポートチームの効果で大きなものは、多くの目で子供のニーズを捉えることができるというものだろう。

■しかし、話は結局「在籍している期間という短期決戦で子供を学校復帰させるのに有効なサポートチームのシステム構築」の話に終始した。教師の仕事量を考えると短期決戦でいくためにはサポートチームが必要だということでしかなかった。方向性がこれでは「アセスメント→個別教育計画→チーム援助実践→チーム援助評価」という流れも大人側の都合によるバイアスがかかるだろう。実際に子供と会っている中でアセスメントが一番難しいと思うのだがこれについて考えてみよう。漂流教室であれば一年近く子供と会って子供の特徴と成長の行方を見る。しかし、このサポートチームの方向性では、子供の姿の中で学校復帰に繋がりうる部分しかピックアップされないだろう。子供の成長を捉えるのではなく、大人の関わりが可能性を見ることがアセスメントとなる気がしてならない。課題としては就労教育にどう繋げるか、基礎学力をどう身に付けさせるという話も出ていたが、ここも同じ方向性によるバイアスがかかるだろう。

■分科会は②家庭にひきこもりがちな不登校児童生徒への支援について に出席した。余市適応指導教室岩見沢IPCユリーカのボランティアスタッフ、道立教育研究所の事例報告があった。ユリーカの報告以外は「ひきこもっている子供のところに家庭訪問して、教師がその子供の好きな教科についてプリントを作ってやっている」という程度の話だった。これは本当にそうで、その子供がどんな具合に毎日を過ごしているのかや言葉がけの仕方、プリントを作る際の注意点、指導に当たって気をつけていることと子供の変化等の報告は一切なかった。ユリーカの報告は、漂流教室でやっているミーティングの中で聞く話と変わりない訪問の話で子供と会っている様子がよくわかり、そうそうとうなずきながら楽しんで聞いていた。

■事例報告の後は、討議ということで1、ひきこもりがちの子供へのかかわり方 2、子供のアセスメント・関係機関の連携方法 3、学習支援の方法 という三つの柱を立てて話していこうと司会者が発議した。この分科会は三つの中で一番参加者が多い分科会で参加者も意識が高いのかと思ったが、一つめのかかわり方について教師・適応指導教室職員どちらからもなかなか話がでない。ようやく教師から発言が出たと思ったら「適応指導教室というのはどこが設置しているのですか」という質問だ。

■おそらく、多くの人たちが不登校の子供に会うことができずにいる状況にやきもきしているのだろう。そして、その状況を「ひきこもりがち」と捉えている。しかし、社会的引きこもりと不登校になった子供が教師達と会わないでいるのとは違う。学校に行かないのだから、教師達と会わないのは当たり前のことだろう。家庭訪問しても会ってもらえないのだって、会わす顔がないからとか先生が嫌いだという一言ですむことのほうが多いのに、「ひきこもりで心配」という話にすりかわってしまう。学校に行かないということは、学校に関わるものは全部嫌われていると自覚したほうがいい。その上で会いに行くとしたら、まず「行きたいと思っているんだけど、どうかな。来るっていうなら来てもいい、くらいだとうれしいんだけど」などと聞いてみてからはじめるべきだろう(※「行きたいと思っているんだけど、いいかい」ではダメ)。これは単なるマナーだ。ふられた相手にもう一度交際を申し込むことと似ているな。

■ということで、分科会②にはがっくりしましたとさ。③については相馬氏のレポートをよろしく。