漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

その前その後

■合同教研はいつもの「不登校・登校拒否・高校中退」分科会へ参加。もう14年連続ですよ。そうやってずっと見ていると、変化がわかって面白い。

■2000年代初めは、学校へ戻したい教員と、子供の今の姿を知ってほしい保護者との間で激しいやりとりがあった。それがいつの間にか「不登校」そのものが問題ではなく、背景にある「課題」がテーマになった。教員の意識が向いたのは発達障害で、不登校分科会は一気に教員の参加が減り、もっぱら民間団体の活動報告の場になる。そして、最近は教師のつらさや貧困など、ほかのどこにも当てはまらない「行き場のない」レポートが流れ着くところへと変わった。それはおそらく不登校や高校中退として現れる課題の多様さにつながっている。

■長らく「さて、どうしよう」という現状認識と悩みの交流が主だった同分科会だが、今年は新たな変化が見られた。定時制高校の「卒後指導」の報告や、高校教員による中学生への無料学習支援など、自分の持ち場の「少し前」「少し後」に関わる実践が増えた。おそらく、これがひとつの解答なのだと思う。自分の担当の責任を果たすべく頑張るのとも、組織間連携を求めるのとも、似ているけど少し違う。ちょっとはみ出て何かをする。はみ出た部分の重なりがセーフティネットになる。

稚内適応指導教室が他自治体の子供を受け入れたり、高校生を受け入れたりしているという話も聞いた。似たようなことはほかの適応指導教室でもあって、これもはみ出て何かをしている例だ。

斎藤環氏は不登校やひきこもりについて「社会的排除の文脈で考えるべき」と言っている。その例に倣うなら、この分科会は「若者の社会的包摂」というタイトルになるのじゃないか。自分の活動の「その前」と「その後」に手を伸ばすことは排除を防ぐひとつの方法だろう。(11/9昼)