漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

青森の事例

■おもしろい記事を見つけた。

www3.nhk.or.jp

青森市は新型コロナ対策などとして昨年度から市立の中学校すべてでテレビ会議システムを使ったオンライン授業を導入し、自宅でも授業を受けられるようにしています。
 (~中略~)
その結果、毎年国に報告している調査で、不登校になった生徒のうち登校できるようになった生徒の割合が、2019年度は26.1%だったところ、オンライン授業を本格導入した昨年度・2020年度は49.3%とほぼ倍増しました。全国平均の28.1%と比べても大きく上回りました。

■興味がわいたので少し調べてみた。オンライン授業は一斉休校時にはじめたとのことで、実は不登校対策ではない。ただ、不登校だった子のおよそ4分の3がオンライン授業に参加していた。学校再開後そのうちの92.5%が登校し、例年に比べ下げ幅も少ない。もしやと思い、昨年度末に不登校だった生徒の登校率を調べると前年に比べ明らかに高い(夏休み直前の中学校で2019年度は約40%、2020年度は約70%)。

■学校へ来るようになった生徒にオンライン授業の感想を聞くと、

  • 臨時休校中、登校しないのが自分だけではないので、気持ちが楽だった
  • 周囲の目を気にしなくてもよいので、気持ちが楽だった
  • 新しい学習形態に興味をもった

との答が返ってきたそうだ。一番多かった答は「周囲の目を気にしなくてもよいので、気持ちが楽だった」で、他人のまなざしが子供を追い込んでいるとわかる。「登校しないのは自分だけではない」「新しい学習形態」からも「みんなとおなじ」であることの重要さがうかがえる。

■授業の仕方も工夫している。学年の全クラスでおなじ教科を教える。一人の先生が各クラスのモニターで授業をし、ほかの先生はティーチングアシストとしてサポートする。また、基礎学習はAIドリルを導入しているようだ。

不登校に関係なく始めた仕組みが登校を促したのはおもしろい。だからこそ、これを不登校にからめるのは不安だ。そうしたとたん、全生徒に向けたはずのものが、不登校の生徒への「特別」な「支援」になってしまう。せっかく「みんなとおなじ」だったのが、また周囲の目が気になる。

■現在、青森市では、ひとり一台の端末をつかい、個々の状況にあわせて以下の学習方法を選べるらしい。

  • 自宅において、グーグルの各ツールを活用した教師とのやりとりや面談
  • 自宅において、「AI型ドリル教材」を活用して、自宅で学習
  • 自宅からのオンライン授業
  • 別室に登校して、「AI型ドリル教材」を活用して、学習
  • 別室からのオンライン授業

こうやって授業や学校との距離を自分で調整できるのは助かるだろう。これをほかの生徒もつかえたらいいのに。行ったり来たりできる学校、休みやすい学校が、結局のところ不登校を出しづらい学校になる。休ませないよう学校が努力すればするほど、一度の休みが致命傷になり、学校に行けなくなるわけだから。

■また、オンライン学習の効用を答えたのは「勉強が嫌いではない」生徒たちというのも見逃せない。学校が勉強をする場所ならば、勉強しない生徒は居場所がない。学校はいったん勉強を捨てられるか。勉強を忌避する子供への手立てはなんだ。