漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

カウントされていないのは

漂流教室はどこかに所属しているわけではないので、開けるも閉めるも自分たちで決められる。だから、新型コロナウイルスの感染拡大防止に学校が一斉休校となったときも通常営業できた。

■8月24日の山田の日誌にある札幌市の慰労金は、基本は国の出した慰労金の基準に沿っている。国の対象範囲である医療従事者、介護サービス事業者および障害福祉サービス事業者の仕事を下支えするため、子供を預かってくれた施設や団体。そこに札幌市独自の慰労金を出す。フリースクールはそれには該当しないので、慰労金給付の対象にはならない。「フリースクールは一時預かり事業じゃないやい」なんて言った手前、該当するとも言えず。まったく俺のバカバカ。でも、違うものは違うから仕方ない。

■これについては文教委員の市議も動いてくれたのだが、くつがえることはなかった。ただ、「児童福祉施設等の感染症対策」はフリースクールも対象になっていて、予算もしっかりついている。子ども食堂も別口で補助金が出ている。まったく無視されているわけではない。

■札幌市内の児童会館、ミニ児童会館は一斉休校を受け2月28日から3月6日まで全館を休館としたが、3月7日から再開する。それからは4月の再休校の際も休館にはしなかった。札幌市が、共働きなどで留守家庭となる児童への影響を考慮して決めた。というところで冒頭に戻る。漂流教室は、というかフリースクールは行政のどこにも属していない。だから休むも開けるも自由にできる。これが、市のシステムに組み込まれたら、児童会館のように一斉に休みとなり、一斉に開けることになるのか? それと引き換えに慰労金をもらえたりするのか?

■「子どもの権利」を軸に、官民あわせた子育て支援、保護者支援の仕組みを構築したいと俺は考えている。当然、フリースクールもそこに入る。さて、その場合、どんな形がいいのだろう。上で述べたように、いまも、ものによっては補助金の対象になっている。さらに関係を強め、かわりに運営の自由を失うか。いや、そもそもそれはバーターするものなのか。なにか誤魔化されていないか。

北海道新聞の特集記事「児童虐待 届かぬSOS」に認可保育と認可外保育の話が出てくる。24時間保育をおこなう認可外保育所。「親子にとっての最後のとりで」であり、連携の不十分さは行政も認めているが、保育所関係者の目は冷ややかだ。

「普段は認可外に補助金を一切出さず、夜間保育の必要性にも目を向けないのに、事故があれば行政は責任ばかりを追求してくる」

「夜働かないと生活できない」というニーズが存在するにもかかわらず、夜間保育を利用する親子への対応は現場任せが続いている

フリースクールもこれと変わらない。札幌市では運動が実って補助金は出ているが、学校を経由しない、または学校から離れた子供の成長に行政は目を向けているかと問うなら、答えは否だろう。「学校以外で成長したい」というニーズが存在するにもかかわらず、フリースクールなどを利用する親子への対応は現場任せが続いている。

■そもそもが、学校が休みになって、シングル家庭などが子供の預け先に困るからと児童会館の開館を決めたり、慰労金を出したりするなら、フリースクールなんて年中もらってかまわないんじゃない。子供が不登校になって、働きに出たくても出られないという話はよくある。でも、そういう必要性は視界に入っていない。慰労金のことでわかったのは、「役所から見える児童福祉・子供支援の風景」が、相変わらず学校中心の子育てシステムだったということだろう。カウントされていないのはフリースクール子ども食堂ではなく、ある種の子供とその家庭。その点では認可外保育所と共通で、だからフリースクール補助金出すなら認可外保育所にだって出していいと思うぜ。