漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

話し合いの話し

■エールアライブでミーティングの司会。イベントでの商品売り上げをどう配分するかについて、有償・無償の労働それぞれの意味合いも考えつつ話し合って、かなり楽しかった。

■話し合いというと目下フリースクール的に気になるのは「教育機会確保法案」。4日にこれまでの意見を取り入れたという座長試案が出されているが、内容についてはひきこもり名人勝山実の鳴かず飛ばず働かずを参照してもらいたい。何がどう取り入れられているのやら、さっぱりだが。

■この法案とよく似た経過で出来た法案に「性同一性障害特例法」がある。確保法案と同じく、当事者が希望していた立法に議員が乗っかってきた議員立法である点がまず同じだ。次いで、とにかく法律ができなければ政治の舞台で話が出来ない「蟻の一穴理論」を成立の拠り所とする賛成派と、論議を限られた人々だけでやって拙速に法案を作るよりも国民全体に当事者のことを知ってもらいたいという反対派がいたが、議員によって流れを一気に推し進められている点。この賛成派と反対派の議論がどのようなものであったか、ちょっと知りたい。そして、外部から見えづらい形で論議を重ね、議員の考えを反映させることになってしまい密室政治と言われても仕方のない拙速な経過をたどっていることも同じだ。

■一方違う点としては、特例法は当事者からも外部の研究者からも法案に批判すべき点今後改善していくべき点があることが当初から認識されており、見直しの時期に合わせて(確保法案もこれはある)当事者が強力に活動してきている。詳しくは一般社団法人gid.jpのサイトで見てもらいたい。確保法案を推進している人たちは、蟻の一穴理論だけは性同一性障害特例法の推進派と同じように語る。しかし、大きな違いは今回の法案が最終ではないと言いつつ、最終的な目標・到達地点を決めていない。ここは大きく違う。政治的にこういうものなんだ、と法案成立を訴えるならば、ここもきちんと真似しなくちゃね。

■なのに、理想形としてJDECで検討を重ねてきた「オルタナティブ教育法案」ですら、ごく一部のフリースクールの意見で出来たものに過ぎなかった。フリースクール運営者だけでなく広く日本の教育を根本から問い直すという視点も、意志はあってもやったことは無い。なのに、実利を求めて法律に手を出したところを「教育」を考える議員に狙い打たれ、当事者の思いとはかけ離れた条文が盛り込まれた。恐らく事ここに及んでは、法案の成立自体を止められないだろう。ならば、次善の策として、関係者は今後の見直しにおいてどのような事を要求していくのか、コントロールを取り戻さねばならない。その要求のメインとなるのは、賛成派が成立のためと切り捨ててしまった(中には厚顔無恥にも、重要だと語っていた条文がカットされると「ホッとした」と述べた人もいる)、反対派が検討すべきと繰り返し述べている事項だ。いくつか具体的に言うならば、この法案を不登校の児童生徒への対応を目的とするのではないもの変えること、人が成長する際に休む権利の恒久的な保証、多様な教育を行う(≠不登校児童生徒を受け入れること)場を国家が支援することなど。ちなみに「個別学習計画」の条文は、「法案成立のために議員や役所が納得するために入れた」とJDECで語られているので、戦略的に使う方向性でお願いします。

■ということで、この話し合いはいつするのかな。これは「フリースクール」が法案を考える前にやらねばいけなかった、自分たち自身の活動のフィードバックなんだと思うけど。六月のJDECでこれを話し合うなら、行きますぜ。(火曜日)