■今回の目玉はやはり「オルタナティブ教育法案」だろう。昨年の大会でも触れられていたが、こんなに早く草案がまとまるとは予想していなかった。それだけ情熱を傾けているのだろうし、政権交代の影響もあるのかもしれない。
■現在、学校教育法第1条で定めた学校に限られている「普通教育」の枠を広げ、子供の学習の権利を保障しよう、というのが法案の骨子。フリースクールやインターナショナルスクール、またはホームエデュケーションでの学びを、学校教育法とは別枠で「公教育」に位置づけるものになる。論拠は子どもの権利条約にある「学校設立の自由」だろう。
■数年前、北海道フリースクール等ネットワークの会則を巡って、ちょっとした諍いがあった。当時の会則は加盟団体を「民間の教育機関」としていた。それで、主に「居場所」を活動の中心に据えている団体から、「教育」という文言が入っているなら加盟しない、と注文が入った。議論の末、「教育機関」ではなく「居場所と学びの場をすすめている民間の施設・団体」となって今に至る。フリースクール“等”のネットワークである以上、妥当な判断だろう。
■今回の新法提案は、フリースクール全国ネットワークが「教育」へ大きく舵を切ったことを意味する。東京シューレや札幌自由が丘学園など、独自の教育理念のもとに活動を進めてきた団体には当然の決断だろう。シュタイナー学校なども賛同するに違いない。そういう団体は、実は「不登校」は関係がない。たまたま利用者がそうだった、というだけで、実現したいのは理想の教育だからだ。一方、「不登校」に対応すべく設立したフリースクールも数多くある。そういうところは「不登校」がアイデンティティーの一部になっており、そこを外してものを考えることに慣れていない。新法提案を受けて、それらの団体がどう出るか。かなりの混乱を生むだろう。
■混乱が予想されるのはフリースクールだけではない。昨年7月のフォーラムで、「フリースクールと不登校は関係がない」と発言した際、ポカンとした空気が会場を覆った。恐らく保護者も「不登校」を外して考えることに慣れてないのだろう。または、そこまでの余裕がないのかもしれない。
■来月半ばまでに加盟団体からの意見を集約し、修正案作成に着手する。フリネット(早速使ってみた)の動きは結構急だ。混乱のただ中で賛同者を集められるかは少々危うい。「フリースクール」というだけでは結束できない。何をしたいのか。それをしたい自分は何者なのか。アイデンティティーが問われるのは提案側も同じだ。それぞれが自団体を見直し他団体を見直す良い機会だと俺は思ったが、しかしそれにはもう少し時間が欲しいね。
■写真は、年越し派遣村にも使われたオリンピックセンターの宿泊棟。狭いっす。ここにオリンピック選手も寝たのか?