漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

全障研北海道支部第28回夏期学習会

■全障研に出るのは今回が初めて。札学に入るのも初めて。講義室が狭い。第3分科会「ADHD高機能自閉症等の軽度発達障害・強度行動障害の理解と支援」に参加。共同研究者は、二通・長沼コンビと勤医協菊水こども診療所の福山桂子氏。参加者およそ60名。部屋がびっしりと埋まる。それだけ注目されるテーマということか。

■レポートは5本。1)保護者から二次障害を起こした子供の事例、2)小学校教員から行動障害の子への指導例、3)高等養護学校教員から養護学校の現状について、4)当事者からの提言、5)親の会からネットワークの重要性について。当事者の話は少々退屈であった。不登校の研究会でもそうだが、こういう場所での当事者(あるいは元当事者)の話は一般向けに加工されすぎていて、あまり参考にならないと感じるのだがどうか。

■交わされる議論は、普段、教育分野の研究会にばかり出ている身としてはなかなか新鮮だった。二次障害に絡み、「不登校になってしまった」「不登校にはならなくて済んだ」という発言が飛び交う。ここでは発達障害がメインであり、不登校はそこに付随する「問題行動」のひとつだ。不登校の研究会ではそれが逆になる。まず「不登校」という問題があり、発達障害はその要因のひとつでしかない。当たり前といえば当たり前だが、そこに微妙なズレを感じて、一度参加者を総とっ替えしてみてはと夢想する。

■行動障害の出た子は、障害の重い子の中で「自分が役に立つ」経験をすることが効果的な場合があるそうだ。養護学校の新たな役割になるのでは、という話だった。これからの特別支援教育の中で、養護学校は当該地域の小中学校のセンター的機能を担うはずで、果す役割はますます大きい。しかし、特に人員も間口も増えるわけではない。だから、軽度発達障害の子の入学が増えることで、重度の障害を持つ子がはじき出され、より遠くの学校へ行かなければならないという問題も起きる。また、行動障害の子が養護学校で回復したとしても、3年という期限の中、本来持つ力を引き出し得ないうちに卒業してしまうケースも多いという。専攻科設立の必要性に同意する。

■それにしても討論に身が入らない。それどころか、時間が経つにつれ違和感が増してくる。これは何だろうと考えてわかった。この分科会で受け取るもの、与えるものが自分の中ではっきりしていないのだ。

■極端なことを言えば、発達障害があろうとなかろうと訪問では余り関係がない。訪問は2人だけの関係だから、2人がいいと思っていればどんな形でもそれが"スタンダード"だ(『漂着教室』にはきっと関係あるが、そっちはまだ実感がない)。集団への適応を図るわけでもない。問題行動を正すわけでもない。療育が目的じゃないから。レポートの中に、指導に至る道程の第一として、「徹底して信頼関係を築くこと。そのために要求に沿った活動を優先すること」とある。ここだけに特化したのが「漂流教室」の活動と言っていい。

■その結果、子供たちはどうなったのか。それが俺から与えられることであり、それだけで本当にいいのかという問いが俺の得たかったことと気づいたのは帰りの車の中だった。次回はもっとマシな参加が出来るだろう。

■最後に、これからの活動の参考になるだろう発言をふたつ。ひとつは二通さんの「特別支援教育に肝要なこと2点」。二次障害を起こさせないこと、問題をポジティブに捉えられる物語を提起すること。ふたつ目は長沼さんの「発達障害の子供への支援3点」。信頼のおける大人がいる、世の中のルールをはっきり伝える、具体的な参考になるモデルがいる。こうして見ると、うちでもやってる/やれることは多そうだ。また、長沼さんより配られた、辻井正次中京大教授による成人期の高機能広汎性発達障害者支援の講演メモも示唆に富む。これ、希望者にはコピーして差し上げます。

■ちなみに山田はヘルパーの分科会に出席。そっちはどうだったのか、今日は自分が疲れていたので聞けなかった。明日の日誌を待とう。