漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

不登校浄瑠璃

■埼玉県の虐待条例改正案は提出見送りになったとのこと。とりあえずはよかったが疑問も。そもそも条例案は10月6日の福祉保健医療委員会で自民、公明による賛成多数で可決され県議会に送られる手はずになっていた。13日の本会議で可決の可能性が高いと反対運動が加速し、今回の撤回に至ったのだが、委員会提出前ならまだしも、可決したものを「やっぱりやめます」と引っ込められるものなのか? それが可能なら本会議で可決してもあとから撤回できるってことにならないかしら。本会議で否決するのが筋だと思うのだけど、どうか。

■まあ、自民県議連によれば条例自体は「瑕疵がなかった」そうで、「私どもが考えていた方向性ではないところに世論が動いてしまった」ため撤回したとのことなので、ほとぼりが冷めたらまた出してくるでしょう。ご用心ご用心。

■全然関係ない話。ラジオを聴いていたら浄瑠璃の構成を説明していた。いわく、浄瑠璃は五段構造。初段の「恋慕」で事件が起きる。二段目は「修羅」は文字通り戦いがある。三段目は山場となる「愁嘆」。四段目の「道行」で事件が解決に向かい、五段目の「問答」で日常に戻る。

不登校の段階表に文句をつけておいてなんだと言われそうだが、この構成に不登校を当てはめたらと考えた。初段は当然、子供が学校へ行かなくなるところからだ。なんとか登校させようとする大人と子供の戦いが「修羅」。不登校へ至った経緯、子供の思い、親の背景などが「愁嘆」で明らかになる。「道行」は心中ものが流行ったせいもあって死へ向かうイメージがあるけれど、実際、子供と一緒に死のうと思い詰める保護者もいて、決して大げさではない。一方で心情の移り変わりを風景の変化に託すととらえれば、時間をかけて変わっていく様子を描けるのではないか。で、「問答」で元に戻る。

■もともとはこの「元に戻る」に興味をひかれた。世界が変わるわけではない。『ガラスの仮面』でいえば「通り雨」のような小品。でも、一度崩れた日常を元に戻すためには相当の葛藤があり、時間とエネルギーが必要だったと思うのだ。傷やわだかまりだって残るだろう。それはおなじようで、やっぱり違う世界なんじゃないか。

■ここまで書いて、確認のためもう一度調べたら五段構成は歴史上のできごとをあつかったもので、町人の暮らしを描いた「世話物」は三段構成なんだとか。なんだよ。まあ、いいや。

■きっかけとなったラジオ番組はNHK第2放送の「おしゃべりな古典教室」。NHKは経費削減で2026年度からラジオ第2を廃止(ラジオ第1と一本化)する予定だそうだが、外国語講座や高校講座をなくして市民の学力と教養を下げようって魂胆なのか? こうやって思わぬものに触れる機会を減らさないでほしい。

www.nhk.jp