漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

ひとりのメディア

■「テレビはみんなに向けたメディア。ラジオは個人に向けたメディア」。鴻上尚史がずいぶん前にそんなことを書いていた。どちらもマスに向けたものながら、ラジオがつなぐのはパーソナリティとリスナーの一対一の関係だ。だからテレビは「テレビをご覧のみなさん」と呼びかけ、ラジオは「ラジオの前にいるあなた」と呼びかける。そういえば俺も深夜にひとりラジオに耳を澄ませていた。孤独に向いたメディアはある。

■というところで動画配信はどうなんだろうと気になった。Youtuberは「みなさん」と呼びかけるのか。それとも「あなた」なのか。「あなた」なら、あれが新たな孤独を支えるメディアになるのかもしれない。

■それで中学生に訊いてみた。「みなさん」なの? 「あなた」なの? 答は「みなさん」。そうか。あれはテレビなんだな。確かに「昨日のあれ見た?」みたいに盛り上がれるのはテレビの楽しみ方だよね。いまのラジオ的なものってなんなんだろう。「あなた」に呼びかける文化は。これまた聞かないのでわからないけど、ラップとかどうなんだろうね。「みんな」じゃなく「お前」って言ってそうなイメージ。

■本だったり音楽だったり映画だったりラジオだったり、「孤独」はけっこういろんなものを運んできて、それがいま他人とつながるよすがになっている。キーチも言っている。「いきる、たのしい、ひとりだから」。孤独に向いたメディアがちゃんと生き残って、「ひとり」を支えてくれたらいいな。もっとも、こんなことを言えるのは俺がこの国ではマジョリティで、本当の「ひとり」を知らないからかもしれないけれど。