■『プロチチ』三巻について書く。(一巻についてはこちら、二巻はこちら)
- 作者: 逢坂みえこ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/07/23
- メディア: コミック
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■ハイライトは虐待の話、ではなく、いじめの原因となった同級生との再会のシーン。突然、足元に穴があき、落下する主人公。落ちた先は学校の教室。制服を着て、座席についた状態で我に返る。そこで友達だと思っていた同級生に裏切られ、また足元に穴があいて、今度は体育の授業の場面へ。そこでも同級生にひどい仕打ちをされ…。と、これは要するにフラッシュバックの状況を描いているんだけれど、回想シーンにするのではなく、実際に店の床に穴があく表現にしたのがいい。思い出すんじゃないんだと思う。そこへ瞬間に移動するんだ多分。
■『ベル・エポック』で、自分の世界にとじこもり周囲とうちとけない女性を表すのに、逢坂みえこはキャラクターの四方にコンクリートの壁を描いた。職場で彼女を揶揄する同僚の声が聞こえてくる。すると突如、分厚い壁が床からせり上がって彼女を囲い、噂話をすべて遮る。同僚にもその壁が見えている。本物の壁。当時、そのあまりの直接的な表現に感心したのだけれど、『プロチチ』でもその技は遺憾なく発揮されている。
■漂流教室を始めたばかりのころ、あるボランティアスタッフからこういう報告を受けた。訪問先の子が、クラスのみんなが自分を冷たい目で見る、と言う。みんなが冷たい目で見てるように思うんだね、と返したら、「思うんじゃない。本当に見てるんだ」と強い口調で反論された。「そう思うんだね」という返答ではダメなときもあるんですね。
■そのときから、「思うんじゃない。本当にそうなんだ」という言葉が俺の中にずっとある。そして、逢坂みえこの表現にも同じものを感じる。そう思うんじゃない。本当にそうなんだ。そうなんだろう、きっと。で、そこからどうするか、だ。(11/26夜)