漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

第四回ひきこもり支援者全国実践交流会(その2)

■実践交流会第2分科会は「学校教育等での発達支援」をテーマに、札幌星園高校と札幌自由が丘の報告があった。

■このテーマの答はもう出ている。ふたつの報告は同じことを伝えていた。「小規模校で時間と手間をかける」。つまりこれが答ということだ。

■星園高校は市立の昼間定時制高校で、学校全体でキャリア教育を推進している。ここでの「キャリア」は、「自分の生き方を見据えて、生きていくための力を養う」という意味で、導入後、卒業時の進路未定者0%、進学率就職率の大幅アップなど目ざましい成果を挙げている。

■札幌自由が丘はオルタナティブ・スクールを標榜し、来年度より株式会社立で通信制高校を始める。学校であることのメリットは何か。ひとつは、場所と時間を確保できることだ。両校とも「学校=居場所」であろうとし、生徒とのコミュニケーションに多くの力を割いている。定時制通信制の時間に余裕のあるカリキュラムがそれを可能にする。その上で、子供たちひとりひとりに合わせた対応を図る。

時間は最大の援軍である。一定の環境や支援のもとに時間を味方につけ、内在する力による生徒自らの成長をゆっくり(ダラダラと)待つ。定時制高校が4年間ということには大きな意味がある
(星園高校のレジュメより)

■一方で、個人の力では実現が困難な課題については、教員の支援のもと「必修」という形で確保する。生徒全員が挑戦しなくてはならない状況にすることで、集団の力も利用できる。ここでの「必修」は「義務」といったものではなく、生徒と教員がともにひとつの課題をクリアする、という「共有」の発想に基づいている。だから、何度でもやり直す機会がある。落とすためではなく、上げるためのものだからだ。

■「共有」の発想は、全体を通して見られる。どんなに理念をかざしたところで、届かなければ意味がない。星園高校にはJAM(J−自分の手の中に A−アクティブな Mー未来を)、札幌自由が丘には学校の頭文字をとったSJG(S−Step Up J−Join Hands G−Good Sence)という標語がある。一見ダジャレのようだが、わかりやすい形で生徒へのメッセージを発している。これにとどまらず、ジョブカフェを模した気軽に入りやすい進路相談室(星園高校)、自己表現を推進するための放課後活動の充実(札幌自由が丘)など、学校の「理念」は形を変えてあちこちに現れ、共有される。

■学校の理念を明確にすることでメッセージを発する手法が決まる。さまざまな形で発されるメッセージは、繰り返し時間をかけ伝えられる中で次第に浸透し、導かれるべき結果を出す。メッセージを繰り返し発することは、生徒への影響だけにとどまらない。教員の意識も変える。「生徒に受容的態度を」と言ったところで実践は難しい。しかし、ハード面ソフト面から常にそのメッセージが発され、そう動けるように配慮されていればどうか。「生徒情報の共有」だって、こういう環境から出てくるものだろう。

■大事なのは、目指すものが道徳標語のようなものではなく、やってくる生徒の実情と、社会の中での自分たちの役割を鑑みることで導かれたものだということだ。彼らを今いる学校からどう次のステップへ移行させるかは、大きな役割であり課題だ。ふたつのレジュメのまとめから抜粋する。

  • 「若年者の社会移行」の一翼を担う社会的機関としての自覚が必要である
  • 様々な問題解決のためには、学校がソーシャルワーカー的な機能や、場合によっては生活の場を確保するような機能を持つことも必要である
  • 「居場所」と「学びの場」の保障というものは、学生期間に限定して問われる学校側だけの問題なのであろうか。企業等にもより一層の理解を求めたい