漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

"正しさ"なんて関係ない

■気まぐれに買った重松清卒業 (新潮文庫)』が案外に面白かった。家族の死を契機として、何らかの「卒業」をする話が四編収録されている。小説としては余り上手くないかもしれない(文章は上手い)。ストーリー、べたべたにベタだし。ただ、どの物語も決して「良い/悪い」を語らない。そこが気に入った。「良い/悪い」を言わないのは、作者が人生を真剣に考えている証だろう。小説はこれが初めてだが、『よりみちパン!セ』の人生相談は前に読んだ。そのときも同じことを思った

■「食育」が気持ち悪いのは、食べ物をダシに"正しさ"を押し売りするからだ。ものを食うのにうまい不味いはあったって、良い悪いなんてないだろう。まして、その"正しさ"が個人の生活態度にまで及ぶようようでは、何をか言わんや。そうやって「××育」で次々やっていくわけですか。食べ物の次は衣服か挨拶か。そのうち娯楽も睡眠もやられるんじゃない。

■『卒業』の重松清は正しさを主張しない。登場人物は常にあれかこれかと悩んでいる。最後まで結論は出ない。ただ、それぞれに"変化"は起きる。その"変化"が正しいかどうかは、もちろんどうでもいいことだ。だってまだ生きてるんだから。上手くいかなきゃ次さ。


■昨日の晩から降っていたのだろうか。朝、外を見ると、ふかふかと新雪が15cmほど積もっていた。もう何度目か、冬だなあ、とまた思う。訪問2件のうち1件が時間変更で夜に。その頃には新雪も固く凍ってアイスバーンになっていた。それもまた冬だなあと思う。