漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

問題と思いたい

■<と・ざ・ん>のサイトに、先日、札幌自由が丘学園で開かれた不登校に関する実践交流会のことが書かれていた(→http://blogs.dion.ne.jp/to_za_n/archives/4313862.html)。「高校で、心身の不調を訴える生徒が以前に比べてグンと増えた」という意見への違和感が述べられている。増えたから何なのか、ということは書かれていないが、いずれ「××が問題ですねえ」という話でもしたんだろう。この会議には山田も参加してるから、近く報告があるだろう。

■高校でもスクールカウンセラーの配置が進んでいる。相談の機会を増やしておいて、「不調を訴える生徒が以前に比べてグンと増えた」もないもんだ。無医村に医者が来れば、とりあえず病人の数は増えるだろう。といって、だから何も問題ないんですよ、という話ではない。詳しくは後述。

■子供の体力、運動能力が低下しているという文科省の報告が、メディアで頻繁に取り上げられている。体育の時間も部活動も放課後の自由時間も減ってるのに、これで体力が向上してりゃ、そっちの方が驚きだ。だから問題ありません、という話ではない。問題はあるかもしれないが、少なくともこの統計ではわかりません、ということだ。例えば、読売新聞の記事にはこうある。

今回は特に、6歳(小1)から17歳(高3)に注目し、持久力を測る20メートルシャトルランの結果について、生活習慣との関係を分析した。その結果、朝食を毎日食べる子供の記録は、食べない子供の記録をすべての年齢で上回った。テレビを3時間以上見る子供と3時間未満しか見ない子供を比較すると、8歳以上のすべての年齢で、3時間以上見る子供の記録が、男女ともに悪かった。

■一日は24時間しかないのだから、遅くまで寝てたり3時間以上テレビの前から動かない子が、そうじゃない子より体力がないのは想像がつく。しかし、生活習慣が体力低下の主要因なのかは、この調査からはわからない。だって、体育の時間減ってるじゃん。部活ないじゃん。放課後遊ぶ暇ないじゃん。どこか行くのだって車じゃん。ひょっとしたら登下校もスクールバスかもしれないじゃん。高層マンション住まいでエレベーターしか使ってないかもしれないじゃん。あんな高いところに住んでたら、外出自体億劫になるってもんだ。外に出なけりゃテレビでも見るしかない。一緒に腹筋でもするんじゃなけりゃ、体力だって落ちるだろう。

■そう考えると、「子供の体力低下…文科省2005年度調査 朝食抜き・テレビ漬け」という読売の見出しは意図的に過ぎる。全体に低下している中で、テレビを見過ぎてる子はより低いようだ、がせいぜいだろう。「問題」は、往々にして「それを問題と思いたがっている人」のところにあったりする。問題と思いたがって、曖昧なデータや感触を元に語る結果、他の要因が塗りつぶされてしまうことがある。「不調を訴える高校生が増えた」「子供の体力低下は生活習慣に関係」ともに然り。

■もちろん、その反対もあって、「それを問題と思いたくない人」が、問題と思いたがらないゆえに要因を塗りつぶしてしまうこともある。それでは本末転倒。上のような発言をするときは特に気をつけねば。