漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

ツケの行き先

■「新型コロナウイルスの影響による短い夏休み」により「子どもたちへの影響が懸念される」らしい。札幌市教委が注意を呼びかけているとテレビが報じていた。

懸念されることとしては、十分に休めずに疲れを感じたり心のゆとりを保てなかったりして不安定になること、自宅にこもったりお盆の帰省ができず祖父母に会えなかったりしたことでいつもの夏と違う過ごし方によるストレスが重なっていること、などです。
札幌市では、親や教員など周囲の大人が心の変化を見逃さず、子ども達に声をかけるなど注意を配ってほしいと呼びかけています。
この心の変化を見逃さないためにはどうすればいいのか、札幌市教育委員会によりますとストレスを感じている時の子どもには特有の反応や行動があるということです。
例えば「甘えるようになる」「急に泣いたり、怒ったりするなど落ち着きがなくなる」「落ち込んで人に会いたがらない」などの変化です。
こうした場合の保護者の対応としては、子どもを抱きしめてあげたり、話して安心感を与えたりする、子どもの毎日の生活リズムを整えてあげることが解消につながるということです。

いつもと違う夏休み明けに注意を|NHK 北海道のニュース

■まあ、それはそうだろう。夏休みだけの話じゃない。一斉休校からもうすぐ半年経つ。子供たちは(大人もだけど)、その間ずっと、いつもと違う過ごし方を強いられている。影響ないわけがない。だから配慮してねという呼びかけ自体は間違ってないけれど、そもそも「短い夏休み」にしたのは一体誰なのか。教育委員会でしょう。「十分に休め」ないことで、「疲れを感じたり心のゆとりを保てなかったり」するなら、すべきはまず「十分に休める」ようにすることで、自分でゆとりを奪っておいて子供が不安定になるから抱きしめてあげてくれとか、ツケを保護者にまわすのが行政の仕事ではない。

■夏休みが短くなったのは、およそ2か月の休校で遅れた学習を取り戻すためで(『学びを取り戻すby文科省)、休校になったのは新型コロナウイルスの感染を防ぐためだが、当時よりいまの方が感染者数は多い。ウイルスや感染防止についての知識に差があるので簡単には比べられないが、「政治判断」で休校を決めた検証はしなくてはならない。ツケを持っていくなら子供や家庭じゃなく「政治判断」をした人たちだ。まあ、札幌市はなるべく一斉休校を避けよう、するとしても短くしようとしていたので、板挟みになってかわいそうな気もするが、だからってツケを回す先を間違ってはいけない。

■上には書かなかったが、「政治判断」のツケを払わされているなかには教師も含まれる。

子どもたちが大変だと聞きます。学校も大変だと聞きます。家庭も大変だと聞きます。3つあわせて、教育が大変だと聞きます。今に始まったことではない、以前から言われつづけていることですが、大変だ大変だという声は聞こえて、しかし、私が何とかしようという声を聞きません。三者の中で解決せよといいます。これでは三者の重心の位置が変化するだけで、負担は減らない。いつまでたっても大変なままの所以です

漂流教室「設立の辞」で書いたことはいまだに変わらない。

■さてさて、一方ではこんな動きもあって、

www.asahi.com

「学校や家庭以外にも、安心できる居場所や相談場所があることを子ども達に向けて紹介」するキャンペーンなんだそうだ。おもしろいのは、キャンペーン名称は「学校ムリでもここあるよ」なのだが、記事の見出しは「『学校ムリ』なら、相談してみて」になっている。「でも」と「なら」。「ここある」と「相談して」。「最低限の条件」が「仮定に対するアドバイス」に、「存在」が「行動」に置き換わる。不登校に対する世間の意識がきれいに出ている。

■いちいち学校と対置させる気にならないので、いまのところ参加するつもりはない。なにかと関係なく漂流教室はあるし、スタッフはいる。それで別にいいじゃない。