漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

後戻りできない

■こんにちは、ボラスタ高橋です。

米澤穂信の『Iの悲劇』という本を読みました。自分の立場からすると、鋭い皮肉が結末に待っていました。

Iの悲劇

Iの悲劇

■物語は市役所の「蘇り課」に配属された公務員が主人公で、「蘇り課」とは、市の住む人がいなくなってしまったとある地域に、改めて人を呼び、その地域を復活させよう、という市長の選挙公約に則ったプロジェクトチームです。田舎でのスローライフを夢見て、応募者は意外と集まることになり、あれよあれよと住人が増えていきます。しかし、隣人トラブルは絶えず・・・・

■このトラブルは何か気になる点があり、事故ではなさそうなことに主人公は気づきます。それを解決していく、というミステリー小説なのですが、主人公の人柄と仕事に向かう姿勢、そしてその働きぶりを語る上司のことばが印象的でした。

「住民に感情移入しすぎることなく、しかし彼らのために走り回り、不運を密かに悲しんだ」

■公務員って常に平等や公平を盾にするんですが、その中でも主人公は課せられたことに実直に取り組みます。また、すこし危なっかしい後輩にも徐々に理解が深まり、一目置きはじめます。

■そんななか訪れる物語の最後は、大変皮肉めいたものでした。人を助けることと助けないこと。お金をかけることとかけないこと。主人公ががしてきたことは果たしてどんな意味があったのか。読者にも問いかけられた気がしました。

■とても面白かったです。米澤穂信らしく、後味は悪いです。よかったら読んでみてください。