漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

息苦しい

■4年前にこう書いた。特定秘密保護法案が議論されていたころだ。

思えば「美しい国」のころからそうではあった。気に入ったパーツを揃えることが政治。美しい国の形と美しい国民の姿勢を定めれば、美しい国ができあがる。彼の頭の中そのままに。そぐわないものは仕立て直すか、取り除けばいい。
(〜中略〜)
彼が強行採決以外でものを決めたことがあったろうか。多分、彼は議論が分からない。彼の思う美しい形をつくるまでにいくつか手続きがあることは知っている。だから最小限の体裁だけ整える。でも本当は手続きなしでも美しい形はつくれると思っているから、そんなものはなくしてしまいたい。

今はもう体裁を整える気もないらしい。昨日、またひとつ「美しいパーツ」がそろって、またひとつ世の中は息苦しくなった。

■小学5年生のとき、本屋で立ち読みした『デビルマン』に戦慄した。悪魔(主人公)をかくまったとして牧村夫妻は特捜隊に捕まり、拷問のすえ惨殺される。残された子供たちは狂った近隣住民に魔女狩りの生贄にされる。怖くてしばらく眠れなかった。そのときからずっと「隣人」に殺される恐怖を抱えている。

■計画段階で処罰するには監視と密告が前提になる。公安の調査対象には不登校にかかわる団体も含まれているらしい。1996年の内部文書で明らかになった。政治に異を唱えるのはそのころより困難だ。著名な作家や全国紙が堂々と「反日」という言葉を使い、ネットには罵倒と差別があふれている。あっという間に発言が拡散され個人が特定される。首に手がかかったような気持ちでいる。

■過剰に怖がっているということはあるだろう。臆病だからな。マンガのトラウマもあるだろう。だけどイヤなものだぜ。見張られているかもしれないと想像するだけでも。

■そして、それはきっと「反日」だ「工作員」だと罵る人たちも同じだ。「殴りたいから殴る。殺したいから殺す。そこに理由はない」とチバユウスケは歌ったが、理由はある。怖いんだろう。自分も安全じゃないって本当はわかってるんだろう。市民オンブズマン環境保護死刑廃止、人権擁護、日本ペンクラブも公安の監視対象だったという。どこに地雷が埋まっているかわからない。積極的に「一般人」だとアピールしなくちゃ、いつかやられると思ってるんだろう。

■虐待を生むような「機能不全」の家族には独自のルールがある。しかし、それがどんなものか、なにをすればどう罰されるのかはわからない。

  • 家族の問題が大きく、精神的なプレッシャーが増すほど、そのルールは厳密なものになります。ルールは、家族をどうにか保っていく助けになりますが、子どもの成長をさまたげることになります。ルールは鉛でできた風船のようです。何も中へ入れないし、何も逃れられないし、広がる余地もありません
  • 鉛の風船の中の暮らしは、刑務所にいるかのようです(中略)しばらくすると、誰もがいつでもこのルールに従うべきだと思い始めます
  • 家族は、自分たちのルールについて話すことはめったにありません。たいていの場合、ルールに気がつくのは自分がルールを破って、罰せられたときだけです。家族のルールは冷蔵庫に貼ってあったり、暖炉に下げてあったりしないので、秘密の力を備えています

(『共依存かもしれない 他人やモノで自分を満たそうとする人たち (10代のセルフケア) [ ケイ・マリー・ポーターフィールド ]』p.43-44)

機能不全の家族に「美しい国」の行く末が重なる。こんなに世の中をぎすぎすさせ人を疲弊させる政権は、それだけで退陣させていい。