■いつの間にか日の暮れるのが早くなった。道路脇のタチアオイは枯れ、ススキの穂が風に揺れている。まだ日中は暑いけれど、秋は確実に近づいている。
■「多様な学び保障法を実現する会」が解散した。公開された総会議事録から経緯が見える。東京シューレで起きた性加害事件を受け、団体として一致した対応を取れなかった。今後もその状況は変わらないため解散する。簡単にまとめるとこういうことだ。
資料価値を考えサイトは5年ほど残すそう。それはありがたい。
■奥地さんはおそらく「自分は悪くない」と考えている。「NPO法⼈東京シューレの⼈権委員会報告書を認めていないし、NPO法⼈東京シューレを退いた経緯も納得できない」はそういうことだ。俺が東京シューレの関係者なら、公にこんなこと言われたら頭を抱えちゃうな。ちゃぶ台返しにも程がある。それでも「責任は感じている」とは、要は「お騒がせしてすみません」ということだ。過去の事件で世間を騒がせ、会の運営に支障を来した。だから引責辞任した。
■納得はしていないが、代表として責は果たした。すべきことはした、済んだ話と思うから「解散するのは筋がとおらない」との発言になる。あとは東京シューレの問題で(もちろん自分は悪くない)、この会で議論するようなことではない。「シューレの中で起こった問題は、シューレの中で解決してください」でいいはずだ。
■奥地さんの勘違いはそこで、実際はなにも済んじゃいないのだ。子どもの権利を謳う団体で会員が人権侵害を起こしていた。会としての姿勢を示さねばならない。問題の程度を判断できる情報がなかったと議事録にはあるが、まさか人権侵害がなかったと考える人はいまい。
■問題ある会員は除名し、会として声明を出す。そういう方法だって取れた。引責辞任は奥地さんの身の処し方であって、会には会の対応がある。「シューレの中で起こった問題は、シューレの中で解決してください」と言うためには、自分たちの問題、つまり人権侵害を起こし、二次加害を繰り返す団体の処遇をどうするかを決めねばならない。
■言うほど簡単じゃないことはわかっている。そもそも会則に除名の項目がない。学校以外でおこなわれる教育も「普通教育」として法的に位置づけようとあつまった会だ。加盟団体や個人が事件を起こすなんて想像もしなかったろう。口外禁止条項とやらで詳細も不明だ。
■それでも決断はできたんじゃないかと思う。その点では「事件の中⾝によって、会の解散をする、しないではない。事件はどこの団体でも起こりうる中で、どうしていくかが⼀番⼤事」との奥地さんの意見に同意する(あなたがそれを言うのかと思うけども)。「事件の中身」ではなく「事件後の対応」からわかることもある。そして東京シューレの対応はひどかった。当時の代表はいまだに事件の深刻さを理解しておらず、自分は悪くないと考えている。それではともに歩めないと除名を決めてもよかった。でも、「多様な学び保障法を実現する会」は判断を避け、会そのものを消した。苦肉の策だったのかもしれないが、やはり逃げだろう。
■この日誌は未来の自分に向けて書いている。自分がかかわる団体でおなじような事態になるかもしれない。自分が問題を起こすかもしれない。ここまで書いたんだから、逃げずにケリをつけないとね。いや、違うな。現在の自分へか。傍観者の位置にはいないのだから。