■ピッチングやバッティングのフォームが崩れるということが、子供のころ不思議だった。「本来のフォームを見失ってますね」と解説が言う。そんなことあるだろうか。同じように投げて同じように打つだけじゃないのか。
■いまならわかる。フォームは崩れる。気づかないような小さな違和が原因のこともあるし、調子がよくて崩れることもある。知らないうちにズレが積み重なって、気づくとすっかり変わっている。以前どうしていたかすらわからない。
■スポーツに限らない。どんな仕事でも、いや、生き方そのものにフォームはある。
フォームというのは、これだけをきちんと守っていれば、いつも6分4分で有利な条件(6分)を自分のものにできる、そう自分で信じることができるもの、それをいうんだな。
ちがういいかたをすると、思いこみやいいかげんな概念を捨ててしまってね、あとに残った、どうしてもこれだけは捨てられないぞ、と思う大切なこと。これだけ守っていればなんとか生きていかれる原理原則、それがフォームなんだな
色川武大『うらおもて人生録』
■で、どうやら、いま俺もフォームを崩している。人と会うのが仕事だから、対人のフォームがおかしくなっているということだ。原理原則を離れて「思いこみ」や「いいかげんな概念」で話す場面が多かった。
■気づいたなら直そう。野球選手がするように、ひとつひとつの動きを確かめながら人と会う。相手を見る。時間はかかるが、それしかない。(8/16朝)