漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

エントロピー

■赤ん坊が起きる。お湯を沸かしミルクを入れる。飲み終わった哺乳瓶を洗い消毒液に浸ける。三時間後に起きる。ミルクを入れる。哺乳瓶を洗い消毒液に浸ける。沐浴もおむつ替えもおなじ。出す→片づける→出す→片づけるの繰り返し。まだ新生児だからこんなもので済んでいるが、これからどんどん散らかすようになるんだろう。

■子供とはエントロピーを増大させる生き物だなあとつくづく思う。片づけても片づけてもまた混沌の状態に戻す。ここ数年、「維持」に興味のある俺には、赤ん坊の様子がずいぶんおもしろい。

中井久夫によれば「平和」とは「しなやかでゆらぎのある秩序を維持しつづける」ことだ。そのための努力は人の目には映らない。終電後の駅構内の清掃を、毎日のゴミの回収を人は意識しない。だが、それゆえ秩序が、ひいては生命が保たれるので、してみると子供の世話も「維持」=「平和」ということになるのかもしれない。

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■この座談会で「生産性の暴力」という言葉が出てくる。いまの豊かさは生産性を高めることで生まれたわけだが、それは「維持」をどこかに押しつけた、また無視した成果でもある。だからこそサステナビリティが叫ばれたりするのだろうけど、個人の生活でも「維持」を重視していいんじゃないか。だって、それがないとそもそも生活が成り立たなくて、生活が成り立たないのに生産もへったくれもないんだから。つい、自分はなにもしてない、なにも生み出していないと焦ってしまうけど、生産は生活の余剰なんじゃないの。

■ひきこもり名人が「晴れた日は布団を干そう」とずっと言い続けているのもこれだと思うんだよな。ほんと、ヤツはいつも先を歩んでいる。