漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

ワーククエスト

■11月11日の増田くんと13日の関井さんの日誌が面白い。増田くんは就職に傾きがちな自立支援に疑問を呈し、関井さんは学歴を超えた競争を就職活動に感じている。俺はこのふたつは社会参加の問題だと思っている。

■社会に参加しようと思ったら、とかく労働市場経由のルートばかりがクローズアップされる。サポステには数値目標が課せられ、居場所の機能は大きく削られてしまった。学歴は条件のよい職場を得るためのふるいのひとつで、残った人たちはさらに別のふるいにかけられる。

■ふるいは親の資本にもつながっていて、不安定要素が少ないほど残りやすい、逆に言えば不安定要素の高い人からこぼれていくシステムになっている。本来、学ぶ権利や働く権利、社会保障はこぼれた側に手厚いもののはずなんだけど、なぜだか長く残った人が厚い保障を得る状況になっている。数少ない生き残りに資本を集中する方法は縮小再生産にしかならないと思うけど、大学改革や生活困窮者支援を見ていると、大勢のこぼれたグループに投資する気はないようだ。

ドラクエ1はなかなか理不尽なゲームで、プレイヤーは王国の誰も敵わない竜王にたったひとりで挑まされる。王様は期待するばかりで何も用意してくれず、支度金120ゴールドでこんぼうと服を買うところから始めねばならない。この無茶な感じが、就労支援とちょっと似ていると盛り上がった。もともと不利な設定にある人に、ろくな装備も与えず「就職」というミッションへ挑ませる。いや、むしろドラクエより厳しいかもしれない。ドラクエはフィールドを歩いて移動できたが、現実世界は移動にもお金がかかる。おまけにスライム的な簡単に経験値を得られるミッションも少ない。

■せめて最初はスライムと、回復のための食事と宿は用意してほしい、という話になった。居場所でしょ、それって。

■誰かこれをゲームにしてくれないだろうか。脱出ゲームパターンもあったらいい。当面使えないアイテムばかりが手に入って、それらをなんとか組み合わせて脱出する。「引き出しの中から履歴書を手に入れた」「しかし書くことがない」的な。労働市場に照準をあわせた今の自立支援の様子がよく見えるでしょう。

■2011年3月22日の日誌から抜粋。そういうことです。

東京での研修で、「就職とは市場経済を使ったセーフティネット」という言葉を聞いた。この考え方はいい。生きるためには、基盤を支えるセーフティネットが必要だ。働いて賃金を得ることは、最もポピュラーなセーフティネットのひとつだ。よって、現在その方法を取れない人には別のセーフティネットが必要だ。そういうことだよね。

自分で張ったネットは自由が利く。居心地もよさそうだ。他人に張ってもらったネットはちょっと使い勝手が悪いかもね。だから、できたら自分で張るのがいい。そういう差はあるけど、セーフティネットなことは同じだと意識するだけで、かなり見方が変わってくると思う。

■昨日から雪。窓の外は真っ白。寒い。運転も超コワい。まあだんだん慣れていくだろう。事故を起こしませんように。