漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

また明日

■一昨年の夏から漂着教室を利用していた子が、3月から学校に行くという。家は本州にあるのでもう漂着教室には来られない。それで昨日、簡単なお別れ会を開いた(らしい。俺は木曜はいないので以下伝聞)。「最後だって聞いたから」と普段は木曜に来ない利用者もやって来た。普段、それほどつきあいがあるわけじゃない。話をするわけでもない。それでも、同じ場所で同じ時間を過ごした「仲間意識」みたいなものがあるらしい。といって取り囲んで別れを惜しむわけでもなく、要はいつも通りめいめい好きに過ごしていたそうで、そのあたりの距離感が面白い。「やり残したことない?」と訊かれて、「ないよ」と本人じゃなくほかの利用者が答えていたというエピソードも面白い。

■思えば、なんとなく来なくなることはあっても、来られないとはっきり分かった利用者は彼が初めてなのかもしれない。まあ、別に夏休みやら、学校さぼってやらで来てくれてかまわないんだけど。というか、荷づくりが早く終わったとかで今日も来てるんだけど。そして、いつもと同じようにひとりゲームをしている。うっかりすると来週もいそうなくらい自然。

■財布の中にギザつきの10円玉を見つけた。昭和27年鋳造。昭和27年はイギリスがスエズ運河を封鎖し韓国は李承晩ラインを設定。国会中継の放送がスタートし公職選挙法制定後初の選挙が行われる。十勝沖地震発生。サンフランシスコ条約締結と世界初の水爆実験。ラジオ「君の名は」放送スタート。『鉄腕アトム』連載開始。硬貨式の公衆電話が登場したのもこの年だという。誰かが電話をかけるのにこの10円を使ったかもしれない。64年分の黒ずみを酢で洗浄してみた。一緒に歴史も洗い流しているようで一抹の罪悪感を覚えたが、きれいになった10円玉はまだまだ現役で、これからも日本中をめぐっていってくれそうなのだった。

■そうやって10円玉を磨いている横で、「ここで何していいかわからない」「やってみたいことが見つからない」なんて話をしている。俺だってなにか考えがあって硬貨を磨いてるわけじゃない。なんでもいいからやってみたらいいと思うけど、焦ってるときはつい「役に立つ」ことを求めてしまうんだよね。その気持ちはわかる。でも、いきなり「役に立つ」ことはなくて、続けているうちにいつの間にかそうなっていくものなんだよな。とにかく時間が要るのです。木曜のエールアライブでの一コマ。

■アンテナに「かめがゆく」を追加しました。「出張親の会」はいいアイディアだな。
http://kamegayuku.hatenablog.com/