漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

北海道的健全育成支援

■午後に、子供健全育成支援事業推進会議。この事業は今までは生活保護世帯の小〜高校生の学習支援をしていたが、来年度から生活困窮者支援の一環となるので、対象が増える予定だ。

■この事業、対象者に比べて参加率は低い。概ね対象者の一割といったところだ。全国の同事業ではかなりの参加率のところもあるが、道内では振興局単位で一番高いところでも五割に届かない。こうして書くと「なぜ、より多く参加させないのか」「効果が認められないのではないか」という批判的意見が出てくると思う。しかし、そうした批判的意見を取り入れて、参加率を上げることを優先させてはならないのがこの事業の難しさであると考える。

■まず、北海道の郡部の場合、旭川・帯広・釧路・小樽といった中核都市の高校に通うことが物理的に困難なことが多く、そうした場合は1〜2万人程度の人口を持つ町(例えば後志ならば、岩内・寿都倶知安など)にある高校が郡部の進学先としてチョイスされる。結果、そうした高校はその町と周辺の中学生すべての受け皿となる。成績も下位から上位まで幅広く在籍し、郡部の場合は貧困によって高校進学率が低くなるという現象にもならない。実際、北海道の生活保護世帯の高校進学率は全国平均よりも高く、9割を超えている。子供たちの意識としても、高校に行くのは当然であると考えている子がほとんどだ。しかし、高校に行くためには学習が必要であるとはならない。地域の高校には高校入試の点数が半分以下でも行けることが多く、学校生活で勉強できないことが子供の困りごとになりづらい。

■では、生活保護世帯で育つ子供たちにとって、困りごととなることは何か。それは、学校生活ではなく、家庭生活での出来事や学校生活を終えて次のステップに進むときに出てくる。例えば、家庭の中で学習する場所や時間が取りづらいことや、高校から進学をしようとした時に一人暮らしをするだけの余裕が無いなどだ。また、生活体験が少ないことなどもある。これを支援するために、対象となる子供たちと様々な形で接触し、相談できる関係を作る手だての一つがこの事業である。ところが基本的な方向性が「学習支援」となっていると、支援する側も「塾」としての形をどう作るかに考えが傾きがちになる。「学習支援」というと「塾」というショートカット思考も気にかかるところだが、「塾」をすることによって子供支援の形が狭まることは、とてももったいない。「塾」としての事業への参加率を高めることは、様々な姿を見せる子供の貧困に対して大人が接する機会を奪ってしまう。子供の困りごとは高校進学率が低いことではない。この事業で作り出される関係は、より多目的な、多様な関係であるべきなのだ。

■参加率一割という数値は「学習支援を九割にあたえられていない」と見るのではなく、「北海道の子供たちで学習が困りごとなのはその程度」と捉え、それ以外の困りごとを掬い上げるために事業を展開していくのが良い。それが北海道的な子供健全育成支援になると思う。例えば、不登校の子供が通う適応指導教室とのコラボも面白いだろうし、生活体験ということでいえば、拠点を使っている子や訪問をしている子と地域のイベントに参加して、それを対象者に広げていくのもどうだろうか。

■などなど考えて、帰りに函館圏フリースクールすまいるの庄司さんを丘珠空港に送って帰宅したら、ミーティングがあったのを忘れていたよー。(火曜日)