漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

ひろゆきの話を聞く

■昨日の夜に、2ちゃんねる元管理人である「ひろゆき」こと西村博之氏が札幌に来て、「子どもの健康を考えるつどい」という主として養護教員らの集まりで講演をするということを知り、慌てて出かけることにした。2ちゃんねるは始まった当初から面白がって見ていて、今も頻度は下がったが主にパソコンやゲーム、家電などの情報を集めたりするのにもちょこちょこ見ている。お世話になっているものを作った人にこんな簡単に会える機会も無いし、話は面白そうだと思ったしね。

■教育文化会館に集まった面々は、ざっと5,60人以上いたか。上に述べたように教員、それも女性が9割以上で、男性は自分以外に一人二人。ずいぶん偏っているなと思った。講演のタイトルは「あなたの知らない!? ネット社会の光と陰」〜子どもを守るための基礎知識〜 というもの。講演ということだったが、西村氏と司会者の対話形式で行われた話は、まず如何に自分たちがネットのことを知らないかという主催者の話から始まり、ざっと西村氏のプロフィール紹介の後、質問タイムへ。西村氏への質問は、ブログ・Facebookmixi2ちゃんねるニコニコ動画Youtubeといったネット関係の言葉に留まらず、ボーカロイドスマホ、個人情報保護等、わからないと思ったデジタルやネット絡みの言葉ならこの際何でも聞いてしまえという様子に見えた。正直、この辺りは、彼を呼んで聞くのも同僚で詳しい人を探して聞くのも変わらないだろうに、無駄なことを…と思って聞いていた。

■すごいなぁと思ったのは、「人間観察が好きで」と言っていた西村氏の様子だった。そりゃあ普通の人よりはずっとネットやコンピュータに詳しいとは思うが、正直こういう質問ばかりでは嫌になるんじゃないかと思って見ていたが、にこにこしながら話を聞いて答えている。そうすると、質問がどんどん出てくる。会場にいる人たちのほとんどが「自分はアナログ人間だから」「ワープロが無くなったからPCを使わざるを得なくなった」「ネットってわからない」という感じの話を延々していたわけだが、それが質問になっていく。すると、見えてきたのは、学校現場でそういう思いを持った人たちがそれについては真摯に話すことの出来る場が無いまま、デジタル化でございと進まされ、窮屈な思いをしている状況だった。西村氏は、それを聞いているだけで露わにしていったと思う。

■質問の中で、親が子供のアクセスしているサイトや遣り取りを見ることが憚られるが、その中身は気になる、どうしたらいいかという思いが繰り返し出ていた。西村氏の答えは簡単で概略「ネットのやり取りで一対一である必要は全く無い。ネットはおかしな人がたくさんいるのだから、親は子供がそういう人にだまされないように守ってあげてほしい」ということだった。この答えは、自分にはほぼ異論の無いところだが、会場からは「そうはいっても…」という感じの唸り声が聞こえていた。 西村氏は「子供に嫌われるのがいやなんですかね」と言っていたが、嫌われるというよりも子供とコミュニケーションを取ることにとても難しさを感じているのだなと自分は思った。親や教員という立場になると、何故だか一発で子供が納得する言葉を出せねばならぬ、というようなプレッシャーにとらわれ、それに立ち向かっている人が多いように見える。そうなると、ネット絡みのことは、自分の知らないことであるが故に何も言えなくなるのだ。大変だな、と思う。

■自分もいくつか話をすることができた。一つには、ネットのやり取りで一対一である必要は無いという話について、自分の会ってきた人に関していうと、逆に一対一でネットだからこそ話せるという時もあった、ということ。もっとも、西村氏が話していたのは、ネット犯罪から身を守るためには、という文脈だから、ちょっとずれていたりはするんだけど。後、ネットの中で自然発生的に出来ているマナーのようなものを、そろそろ次世代に向けてまとめたり、伝えたりすることはできないものかとも話してみた。お説ごもっとも、的に言われた。

■ということで、西村氏と会場との対話よりも、場が上手に出来上がっていって皆が言いたいことを言い出せるようになったという流れが、一番面白いつどいだった。美味い物があれば来るそうなので、今度は漂流教室やコンティニューなんかで呼んでみることを考えるのも一興かと思う。