漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

魔法の言葉

■『プロチチ』の二巻について書くのを忘れていた。

プロチチ(2) (イブニングKC)

プロチチ(2) (イブニングKC)

■この巻では自閉症についての説明はほとんど出てこない。障害ではなく主人公の個性として描かれている。代わりに子供とのシンクロが増えた。こだわりや切り替えが一歳になった息子の行動と重ねて語られる。一歳児と同じ思考ということではない(分かっちゃいると思うが念のため)。対象を重ねて客観視させる、逢坂みえこ得意の表現だが、子育てを経ての実感でもあるのだと思う。

■山場は子連れでのアルバイトの話。子供に手がかかって思うように仕事が進まない。「ちゃんとやらなくてはならない」仕事は目の前にどんどん積み上がる。処理落ちする主人公。

徳田君 たぶんこれまで君が口にしたことのない魔法の言葉を教えよう
「困っています 助けて下さい」だ
保育所が休みで困っています 手を貸して下さい」
朝来た時にそう言えば みんなで知恵を出し合って も少しましなやり方を見つけられたと思わないか

■店長のこの言葉は、誰にでも当てはまる。誰だって、自分の気持ちは御しがたくて、他人のことは分からなくて、ひとりでやるのは限界があって、でも「も少しましなやり方」はきっとある。例えば「困っています 助けて下さい」と言ってみたら。

■そうするとこのマンガは自閉症の話なのだろうか。この巻で描かれているのは夫婦のすれ違い、親子のすれ違い、職場でのすれ違い、行政とのすれ違い。「ドラマとはすれ違いのことだ」と喝破したのは橋本治だけれど、じゃあ、ここにあるのは普通のドラマなんじゃないのか。そして、そのすれ違いを何とか埋めようとしてる人たちの話なんじゃないのかな。そんで、それを埋めるひとつの方法が「魔法の言葉」だということなんじゃないかな。

■『プロチチ』一巻についてはこちら→ぼくらの物語