漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

五月に聞いた話

■自宅パソコンのOSをWindowsXPに変えて初めて日誌を書いたが、いつもの見慣れた入力画面と違うので、ややびっくりしながら入力中。

■訪問先で、「先進的で物質的に豊かだが精神的に貧しい国の人が、発展途上で物質的には恵まれていないが精神的に豊かな国の人たちと交流することで、健全さを取り戻す」という構造に対する違和感について話す。この構造は昔からあるもので、空間的に移動するだけでなく時間的に移動させる構造で語られることも多い。「今は物質的に豊かだが精神的に貧しく、昔は物質的に恵まれていないが精神的には豊かだった」という言説がそれだ。「学校で息苦しさを感じていた人が、不登校になって豊かな人生を知る」という語りや「優等生でマジメだった人が、不良の世界を見て伸び伸び自由な生き方になる」というのもそれだ。

■どちらの場合も、前者が後者と交流することで完全になるという結末で物語は終了する。しかし、人生が物語でない以上、前者も後者も、物語の後も生きていくことになる。それを忘れると、この物語の語り部である前者は、永遠に精神的な欠乏感を自己のうちに探し続け、後者が前者と同じような状況になることを暗に否定する。時間的に移動させた構造の場合は、過去を固定化して語り続ける。

不登校がらみの仕事をしていて、この物語を成立させようとする圧力を非常に強く感じる。そんな話をよく聞いた五月だった。