■5/10(土)、札幌自由が丘学園主催のフォーラムを聴きに行った。演題は「人をはぐくむ‐フリースクール15年の実践から考える新しい高校の理念と特徴」。会場は佐藤水産ホール。聴衆は30人ほど。
■来年度、札幌自由が丘学園は和寒に校舎を借りて、通信制高校「札幌自由が丘学園三和高等学校」を開校する。その意義を道教大の庄井良信准教授が解説した。
■内容はいつもの庄井氏の話とほぼ同じ。フィンランドの高校生の聞き取りをもとに、自己肯定感と自己決定力を育む教育はどういうものかを語る。「自己肯定感」とは「他者とともにありながら自分が自分であって大丈夫と感じられる」感覚であり、そこを土壌として、自ら選び取る力=「自己決定力」が育つ。間違っても遅くてもいいと保障されるから、子供はいろんなことを試し、最適なものを選ぶことが出来る。
■そのためには、独立した人格への尊敬と「程よい距離感」が必要だ。庄井氏の言うところの「となりのトトロ」である。トトロはいつもは姿を現さない。しかし、子供が本当に困ったときはきっと隣にいる。そういう体験を通して「共存的他者」のイメージを内面化することが、子供の自己肯定感に繋がる。
■ところで、今回の講演は札幌自由が丘の高校設立の意義を語ったものだ。高校設立には和寒という町の協力があり、つまり地域あげての教育の意義を語ったことになるが、そうなるといつもの庄井氏の話が別の色合いを帯びる。
■例えば「子供を守ろう」の合言葉の下、子供の生活に大人が激しく介入するようなケースがある。地域一丸となって子供を大切にしてるようで、実は大人の不安を解消するためでしかない。「程よい距離感」とは、子供に近づきすぎないという側面もある。距離ゼロの関係は子供を守らない。大人の都合が子供の都合を塗りつぶすからだ。「となりのトトロ」の喩えは昨今の「地域の教育力」への警鐘でもあると気づいた。
■最後に「学校設立の自由」を含めた「教育の自由」の必要性が語られた。シューレ中学、シュタイナー学園など、いくつかのフリースクールが学校設立を果たし、札幌自由が丘学園もそれに続く。講演に先立ち、亀貝さんから、札幌自由が丘学園が進める「学校づくり」のテーマの説明があった。曰く、
- 一人ひとりの子供が認められている
- サポートする大人がいる
- 未来に繋がる何かがある
庄井氏の講演で「大きな流れが動いてるときは、立ち止まって考えようという小さな動きがローカルで起きる」という話があった。自由が丘の「学校づくり」も「小さな動き」のひとつとして期待している。