漂流日誌

札幌のNPO「訪問と居場所 漂流教室」のブログです。活動内容や教育関連の情報、スタッフの日常などを書いています。2002年より毎日更新

この本が面白い

■「深瀬和久は人殺しだ」この手紙をきっかけに友人の死の真相を解き明かす湊かなえの小説「リバース」が面白い。この本の主人公「深瀬和久」は平凡なサラリーマンですが、どうせ自分は人よりつまらない人間だと常に自分を卑下しつつ、人にどう思われるか、今この輪の中であるべき自分の振る舞いは何かと、とにかく他者との関りを気にして生きています。そして、過去に元ゼミの仲間だった友人たちと共に重大な秘密を抱えている。

■登場人物たちには主人公のようないわゆる「陰キャ」、そして「陽キャ」、「体育会系」「エリート」「物静か」「ヒエラルキーで自分の周りに置く友人を選んでいる人」といった個性豊かなキャラクターが出てきます。そういうヤツいたわ。いるいる。と思わせるある意味魅力的なキャラクター達。そして話を進めると、表では「友人の死の真相を解き明かす」というストーリーが進みながら、「自分の秘密を知られる怖さ」や「他者との関り」というテーマが通低していると気がつきます。

■それは何もこの本の登場人物だけじゃなく誰にでもあてはまるという事です。誰だって自分が隠している「秘密」を知られるのは怖いし、そしてその秘密を知った人と関わるのはもっと怖い。そして不登校の子ももしかしたらそうなのかもしれないとも思いました。この本の登場人物たちが秘密や罪悪感によって人との関係を遠ざけたように、友人や先生にどうみられているのか不安で怖い、失敗や弱さを隠したい、かっこよく見られたい、過去の失敗から抜け出せない、といった感情から「人に知られたくない自分」を隠すように学校から遠ざかっている、のかもしれない。と、思いました。

■知り合いから「微妙だった」と言って渡された本だったので期待値が下がっていた分とても面白い本でした。とっても有名な本だしね。タイトル「リーバス」=逆転、裏返しの意味の通り、読み終わった後に全てが反転して見えるどんでん返しもついている小説「リバース」。読んだら感想を聞かせて欲しい。