■日曜日は北大で開催された日本思春期青年期精神医学会ワークショップ「不登校の現実(リアル)を捉え直す」に登壇し、発表と討論をした。こうした学会や研究会のようなところで漂流教室に声をかけてくるのは、教育関係よりも医療福祉関係の団体の方が多い印象がある。自分たちとしては、教育と福祉に片足ずつ入れているようなつもりなのだが、教育関係者からはあんまりそう思われていないんだろう。まあ、指導的指示的には関わらないと公言しているから、その時点で相性が悪い。
■今回のワークショップの企画趣旨は
小・中学校における不登校児童・生徒は346,482人となり、11年連続で増加している。かつて学校は、子どもたちが同世代とつながる重要な居場所であった。しかし現在、フリースクールや支援機関に加え、メタバースのような仮想空間を活用するケースも見られるなど、思春期の子どもたちの居場所は多様化している。こうした状況の中、私たちは「学校に行くこと」だけを前提とせず、不登校の「現実(リアル)」を捉え直す必要があるのではないだろうか。学校が子どもたちにとって安心できる場として機能するためには何が求められるのか。また、学校以外の場所を選択する子どもたちは、どのように人とつながり、リアルを感じているのか。その理解を深めるために本報告では、様々な立場からの知見を共有し、現代における子どもたちのリアルを探るとともに、いま私たちにできることを考えたい。
ということだった。秋田大学の侯 玥江さん、大正大学の近藤 直司さんと山田の三人が話題提供をして、北海道大学の加藤 弘通さんが発表を受けた話をした後に会場も交えて討論という流れである。
■秋田大の候さんからは、中1ギャップと言われる現象において、友人-教師との関係、外向性-内向性・ASD傾向という個人要因が不登校傾向にどれくらい影響するかを、中1の一年間の月別に調査した結果が発表された。友人-教師との関係では、4〜5月は教師との関係が不登校傾向の増減と結びつきが強く、7月あたりからは友人関係の方が優勢になるそう。夏以降は全体的に人間関係が不登校傾向と関わる強さは少なくなるが、なぜか9月と2月は友人-教師どちらの関係も影響が強まっているとの由。
■大正大学の近藤さんからは、児童相談所のような相談機関や医療機関で働かれていた知見から、不登校への支援のポイントについて発表があった。「メタモルフォーゼ」という言葉で表されるくらい劇的な変化が発達に起こる時期であることを背景に「大丈夫」「出口はみつかる」という希望を家族に持ってもらう関わりをするという点が印象的だった。また、同性同士の友人関係がキーになることについて指摘があった。
■同性同士の友人関係については、たまたま自分の発表で取り上げた複数事例がそのようなものであった。フリースペースの中でゆっくりと長い期間をかけて作られていく繋がりが、それぞれの人生に少しずつ影響をしていることについて話をした。
■自分の発表でもう一点伝えたのは、世の中がフリースクールに求めている様々な機能を、当事者自身は求めていないのではないかという考察だった。「学校では無い教育の場」「居場所」「療育的関わり」「学校復帰の場」というような役割のある場を当事者は求めていないからこそ、不登校児童生徒の中のわずかな人数しかフリースクールを利用していないのではないだろうか。そして、長年関わっている人たちを見ると、当事者が求めるものは場ではなく「新しい人間関係を築ける時空間の保障」「築いた関係が永続する保障」「関係を自分でコントロールできる保障」のというような概念的なものな気がする。
■三人の発表を受けて北海道大学の加藤さんからは、「発達」という言葉の捉え直し方についての解説があった。人間の成長を語る時に、発達することは良いことで、問題が起こることは悪いことという価値判断がある。しかし、年齢を重ね発達することは、問題とされる行動を引き起こすことにも繋がっている(例えば、自殺は10歳以上まで発達しないとおこらない)。不満を述べることができるようになるのも発達のおかげだが、それは対人関係の衝突にも繋がる。一人になれるようになるのも発達のおかげだが、それはひきこもることが可能になることでもある。果たして、問題行動は無い方がいいのか。加藤さんの下で学ぶ留学生が「日本は問題行動ができないから問題行動が起きる」と述べていたそうだ。諸外国と比較して、日本は休むということがしづらい世の中であり、不登校が問題とされる社会をどうバージョンアップしていくかを考える必要がありそうだ。
■会場との質疑応答では、不登校ビジネスの話や発達の中で一人でいられる能力から二人でいても一人でいられる能力に展開していくこと、同性同士の友人関係、ジェンダーと不登校についての視線が必要になることなど、多岐にわたり話題が出てきた。時間が少なかったのでさらっと流れていったが、考えるヒントになるテーマはたくさん出たと思う。
■正直、医療関係者中心で知り合いに合うようなことはないんだろうな、とアウェイ感満載で臨んだのだが、フリースクール関係でも福祉関係でも結構知り合いが来ていて嬉しい誤算だった。登壇して良かったなと思っている。
■月曜日は久しぶりに畑に行った。いやあ、暑いね。夜は夜勤。(水曜日)