■世の中には子供にまつわるすべてを親の責任にしたい人たちがいる。以前もこういう記事を書いた。
hyouryu.hatenablog.jp
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■不登校は親子関係に起因するとし、「正しい親子関係」を保護者へ指導、短期間で学校復帰を目指すような団体は彼らにとってたいそう都合がいい。それが政治家なら自身のかかわる政策協議会に呼んで話をさせたり、選挙区の行政に口をきいて連携を図らせたりするかもしれない。なにせ不登校の「要因」は「多様」で、子供に個別に対応してもきりがないのだ。といって学校教育を変えるのは面倒だ。親に網をかける方がずっと早いし楽だ。
■やり方はあくまでソフトに「保護者支援」の体裁を取る。たとえば、認証を受けた民間団体を行政が紹介できるようにし、利用で生じる経済負担はクーポンなどで補助する。一方で、就学義務違反の罰則強化など鞭を入れるのも忘れない(この場合は『子どもの権利』が口実になる)。
■面倒なことに、性急な学校復帰が不登校の「解決」ではない、文科省も不登校は「問題行動」ではないと言っている、多様な教育の場こそが必要といった反論は別の親の責任を呼ぶ。不登校はいまの学校教育が時代にあっていないから起きる。子供に合わせた「多様な」学びを用意した。どうぞ好きなところを選んでください。こうなっても行き着く先はおなじで、どこを選ぶかは親の責任。したがって結果も親の責任になる。行政は認証団体を紹介し、ひょっとしたら利用補助くらいはしてくれるかもしれない。お手盛りでも用意されてしまえば、「選択しない」親の責任はますます重くなる。
■ついでながら、現行の「多様な学び」の「多様」とは学校教育を受ける場所が「多様」というだけで中身ではない。また利用料が高額かどうかは見方による。フリースクールに一年通えばなんだかんだで50万円近くかかる。それでいて学校復帰の目処は立たない。二年、三年と通うかもしれない。だとしたら、一括で50万円かけたって一か月で学校に戻る方が割安だと考える人もいるだろう。
■どっちに転べど行き着く先はそう変わらない。「多様」や「支援」はすっかり責任強化の言葉になった。思えば自立支援だってそうだった。俺の気づくのが遅かっただけだ。